ヤッスン

SCOOP!のヤッスンのネタバレレビュー・内容・結末

SCOOP!(2016年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

中年パパラッチと野次られる静と新人記者の野火が繰り出すバディムービーの太鼓判。
前半は週刊誌を舞台としたスピーディーな物語で、このパートは大根仁監督節が全力で出る。テンポよく内容もマッチした音楽と共に痛快な物語が進む。予告で流れたシーンの大半がここで消費され、予告を何度も観てると展開は見え見えだ。

しかし重要なのが後半、静の友人チャラ源の事件から物語はガカリと姿を変える。
チャラ源に扮するリリー・フランキーの怪演は圧巻で、前半と打って変わって圧倒的な緊迫感の中物語が終焉に走る。
予告でも、さらに本編でも匂わせなかったこの展開に驚いた。
この後半の展開が私の中でのこの作品への評価をグッと上げた。

前半部分は先述の通り、2人を中心にパパラッチと編集部の物語としてコミカル部分もあり楽しい。
決定的な写真を撮るべく奔走するキャラクターは皆とても魅力的でキャスティングもバッチリ。
福山雅治の落ちぶれっぷりは最初のカットから全開ながら、キッとカメラを構えた際の眼差しや写真のために手段を選ばない姿も見事。
バディとなる二階堂ふみも、最初は鑑賞者に近い立場として仕事に嫌気を感じるが、静と共に写真を撮り雑誌の人気も上がる過程で仕事と静にも惚れ込んでいく。
その2人が大スクープを手にし(あくまでシャッターを切ったのが野火であることが良い)、愛し合う。
ここからの展開だ。
殺人を犯したチャラ源のもとに、「趣味でありオリジンである」カメラを抱えて走る静。
静が仕事に使うカメラでそれを追う野火。
静は、チャラ源の友人として、オリジンであるカメラマンとして、その命を全うする。その決定的瞬間を野火が捉えるのだ。

この物語はバディムービーであり、野火の物語だ。野火が静からバトンを受けとるバディムービーなのだ。

本編のファーストカットは、車内の静を映し、彼の車を捉えながら長回しのままカメラがドローンに移り東京の夜を映すところで始まる。
そして終盤、ほぼ同じカメラワークで野火とそのバディを捉えて幕を閉じる。
作品とカメラが受け継がれ、野火がこれからも奮闘していくのだ。

後半のリリー・フランキーによる緊迫感も魅力ながら、その展開自体もとても素晴らしく、作品のテーマそのものだったと感じる。
ヤッスン

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