アダコン

SCOOP!のアダコンのネタバレレビュー・内容・結末

SCOOP!(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

思っていたより、ノワールのような退廃的な魅力を持つ作品だった。福山雅治演じる中年パパラッチ都城静の悲哀と葛藤が、シワシワで張りのないレザージャケットにずしりと乗っかっていた。

静自身曰くゴキブリのような仕事ぶり、というか盗撮術が作中を通して描かれる。アイドル同士の熱愛や大物政治家の不倫など、恐らく製作当時に世間を賑わせていたスキャンダルを皮肉って、これでもかと盛り込まれている。それを工夫凝らして激写していく様子が快感。ホテルのカーテンを開けさせるために花火を打ち上げるシーンは最高。静のテンションが完全に変態だった。

普段は若干の嫌悪感を感じる週刊誌の記事が撮られる過程を見て、秘密を暴かれた有名人が右往左往するのを見て、楽しい気持ちになってしまった自分は性格悪いと思う。

とても活気がある熱量で撮られる仕事シーンに対して、どこか影を帯びるリリー・フランキー演じるチャラ源とのシーン。人が良さそうではあるが、タガが外れた言動や行動に不穏な雰囲気が漂う。静とチャラ源の背景は作中描かれることがなく、静はただ「チャラ源には大きな借りがある」と言うように、彼にとっては大切な腐れ縁なんだと思う。ちなみにこの“借り”は公式に裏設定があるので、それを踏まえた上でもう一度見てみたい。

戦場カメラマンに憧れ、芸能スキャンダルカメラマンとして生きる静。そこに苦悩があったのかは作中の彼からは読み取れないが、少なくとも彼は一種の戦場で技を凝らして生き抜いてきて、恐らく最期に最高傑作を完成させる。
自分の天命をわかっていたからこその「撮れ、野火」は鳥肌がたった。

最後の10000円も渡した理由に気付くとちょっと懐かしい気持ちになる。

主題歌と共に流れるエンドロールも余韻を感じさせてくれて満足。

ロバート・キャパによる『崩れ落ちる兵士』と出会ってから、カメラと生きてきた静の生き様をもっと見たいなと思った。
彼の人生の終着点の映画であり、写真に死んだ芸術家のような男の物語だった。
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