140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ジョン・ウィック:チャプター2の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

3.7
”物量と熱量”

ジョン・ウィックが帰ってきた!
あのジョン・ウィックが・・・

第1章は亡き妻の贈り物であった子犬を殺され怒りに燃えた元殺し屋の復讐活劇であり、そして何よりキアヌ・リーヴスの類まれなるスキルにより媒介されたガン=フーなるガンアクションの爽快感を楽しむアクション映画でありました。格闘技のムーヴから着実の確実にヘッドショットで相手を殺傷するリズミカルかつリアリズムのあるアクション描写と亡き妻と子犬の復讐という人間臭い、不器用さや執着心の投影しての殺し屋キャラが多くのファンの心を掴んだのだと思います。

そして第2章。前作の殺し屋ホテルと個性的な殺し屋を物量作戦で増量して、よりコミカルに、よりスタイリッシュに、そして男臭さに拍車をかけつつも、主人公の理解しえぬ世界を不器用と器用の不明瞭なラインや裏社会の厳しい掟や不条理さを結び合わせたものとなっていました。前章の単純明快な復讐劇と斬新なアクション構図からすると物量が加算される分、シンプルい頭に入ってこないシーンも多く、持ち前のスタイリッシュさも熱量伝導率が小さくなっていた印象です。よって前半部のアクションのスタートラインに立つまでがローテンポに映り、退屈な空気を作ってしまっていた気がします。いざ、アクションが始まれば、瞬時に繰り出す銃と早打ち、そして正確性の爽快感は流石です。暗殺計画の準備とその伏線の回収の鮮やかさ、そして次第に大きくなっていく事象と主人公の不条理な立場の拡大、解き放たれる漫画チックな殺し屋たちのアンサンブルで一気に駆け抜けるところは物量作戦が映えました。路上バイオリニストの殺し屋や、力士のような殺し屋はストリートファイターのようですし、ラッパーのコモン演じる殺し屋との執拗な対決シーンも斬新な部分がありましたね。地下鉄の駅構内でサイレンサーを互いに打ち合うシーンの殺し屋職人芸的な面白さや、満員電車の中で距離を詰める2人などワクワクしました。聾唖の女殺し屋との手話での舌戦や鏡の間での文字通りの死亡遊戯的な非日常的なアクションの工夫も目を見張りました。ラストの暗黒社会の奥行と都市伝説的な日常恐怖の具現化含め、第3章に向けてジョン・ウィックは走りきれるのかをヒロイックに描いた幕引きも良かったです。情報整理が必要な物量作戦のデメリットもあり、疲労感も積み重なるので、爽快感のみを追い求めると期待感にそぐわない映画のように思います。