YasujiOshiba

ジョン・ウィック:チャプター2のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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イタリアのジョン・ウィック、たっぷり堪能。なにせ敵役サンティーノを演じたのが、イタリア映画好きで知らないものはいないリッカルド・スカマルチョとくれば、なんだか親戚が出演しているみたいで大盛り上がり。なかなかの伊達男ぶりと、よわっちい悪ぶりがかっこよかったわ。さらにコンチネンタルのローマ支店の支配人なんて、あのフランコ・ネロだぜ。こいつはこれは完全に「ジャンゴ」に代表されるマカロニウエスタンへのオマージュ。

それから、あのローレンス・フィッシュバーンが登場したときなんて、拍手しちゃった。マトリックスのモーフィアスじゃん。「おたがい若い頃にあったよな」なんてセリフをキアヌに向かっていえば、思い出すのは当然、おなじアノマリーでありながらも、役名はジョン・ウィックではなくネオ、あるいは救世主だったころのリーブスだよね。それにしても、ご両人、すっかりいい感じで貫禄が出てきましたよね。

そういえば、そもそも監督のチャド・スタエルスキーは、『マトリクス』のスタント・コーディネーターだったっけ。接近戦でのドンパチアクションは相変わらずキレッキレだし、階段落ちも、車に跳ね飛ばされるスタントも、まだやるかというくらい繰り返されるし、ともかく流れるようなアクションはさすが。

でも今回はやりたかったのは、当然、ロバート・クローズの『燃えよドラゴン』(1973)ばりの鏡の間のシーンにちがいない。映画において鏡の間は鬼門。へたするとカメラもスタッフが写っちまうから、撮る方はめちゃ大変。そいつをあえてやるんだから、チャド監督もがんばったよね。

映画ファンなら、すぐにオーソン・ウエルズの『上海から来た女』(1947)の名シーンを思い出すのだろう(『燃えよドラゴン』はこの作品へのオマージュだったっけ)。でもぼくなんかは、ついついルキノ・ヴィスコンティの『夏の嵐』や『白夜』なんかに見られた、じつに自然で控えめながら、はっとさせるような鏡の使い方を対置したくなる。どっちがえらいというのではなく、鏡がうまくつかわれていたら、ともかく名作なんだってことだと思う。
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