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真白の恋のan0nym0usのレビュー・感想・評価

真白の恋(2015年製作の映画)
3.9
見ただけではそれと解らない『軽度』な知的障害を持つ女の子の真白が、偶然出会ったカメラマン油井に恋心を抱く…切ない悲恋の物語。

その実、度合いは関係なく、軽度であったとしても線引きをしてしまう私たち自身を直視させる作品だった。その『偏見』が何処から出てくるのかを考えさせられました。

線引きのこちら側にいれば、理想を口にして安心していられる。自分の意思でそれを選択してる…それが傲慢だと言うのなら、私は傲慢な人間なんでしょう。

それでよく泣けるね。何様ですか?
そんな自問自答で、無様に唸ってた。

涙目だけど、ホント何様だよって…
悔しいやら悲しいやら情けないやらで…
うーうー唸って震えてるしかなかった。
それで解決する訳でもないのに。

同じものを綺麗だと感じてる。
同じことで心を悩ませてる。
こんなにも同じなのに、同じじゃない。
そう思ってしまう…

偏見。見えなくて、壊せない壁。
自分がそれを作ってるって自覚。

「どうしたら普通になれるの?」

そんな事、言わせたくない…

それさえも自己肯定感を得たいだけなんじゃないって言われたら、返す言葉がない。

どうやったら扉を開くことができるのか、解らないままにしてる。解らないから、見苦しい言い訳をして、自分を正当化していたい。それじゃ誰も救われないけどね。

単に切ない恋物語として観ていたかった。

顔が近いとか、カメラを握る手が触れるとか…小さな事で胸をときめかす真白は、普通の女の子。仕事そっちのけで好きな人の事ばかり考えちゃう真白は普通の女の子。

でも、普通と言う度に、胸の奥が疼く。

何が普通?誰が決めたの?そんなもの、この世界から消えちゃえばいいんだ。それが無理なら、せめて私の中から消えてくれないかな…なんて願っても消えはしない。
それも解ってる。

本人や家族は、いつもそんな気持ちなんだろう…誰かにぶつけられなくて、自分たちにぶつけるしかできないんだろうな。

貫地谷しほり主演の『くちづけ』では、もっと悲しい結末になってしまった。実の家族でさえ、この壁を取り払えなかった。
チョコレートドーナツでも…苦さを噛み締める結果を突き付けられた。心の片隅に置いてあるはずなのに、変えられない。

受け入れられて、愛されて、幸せになって欲しいって思うのも本当の事なのに…そこに愛があっても、乗り越えられない現実。

それは決して、彼等のせいではないし…
健常者が悪いって言える事でもない。
運命なんて言葉で片付けたりもできない。
個性だなんて言ってみても、意味は無い。

満足できる結果を導き出せなくてもいい…せめて、向き合わなきゃいけない。
こういう作品には、いつもそう思わされる。
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