地獄突きビグザム

彷徨える河の地獄突きビグザムのネタバレレビュー・内容・結末

彷徨える河(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 アマゾン流域の奥深いジャングル。他者と交わることなく孤独に生き ている先住民族のシャーマンカラマカテ。ある日、重篤な病に侵 されたドイツ人民族誌学者がやってくる。カラマカテはドイツ人の病を治す唯一の手段となる幻の聖なる植 物ヤクルナを求めて上流を目指す。数十年後、孤独によって記憶や感情を失ったカラマカテは、ヤクルナを求めるアメリカ人植物学者との出会いによって再び旅に出る。

 面白かったです。コロンビア先住民族版の地獄の黙示録といった感じでした。地獄の黙示録は船でカーツ大佐を追うことで、ベトナム戦争の始まりと終わり示していましたが、この作品は現在と過去の二つの旅を通してコロンビアの先住民族がどのように白人に出会い、文化を奪われていったのかを表現し、最後カラマカテは先住民族として何をしたのかが表現した作品。

 最初の若き日のカラマカテの冒険は最初白人に出会い、ゴムという資源のため土地を奪われ、宗教により先住民の文化も奪われ、行きつく先は先住民族として誇りを失った同胞と戦争による文化のない無為な死により、シャーマンとしての使命である同胞に文化を伝えることができず終了します。

 その後、現代で年老いたカラマカテ(老いるという概念は妥当かどうか?)
アメリカ人とともに同じ旅をにでるがその際、世界はいろいろな文化が混合しキリスト文化、先住民族文化の悪いとこどりの現代社会になっている。
そんな世の中でカリマカテと外国人に対して使命を果たす。

 すごいカルチャーの相違がすごい面白い作品です。
記憶に対する違いや、時間に対するとらえ方、自然に対する畏怖や敬意の仕方などいちいち外国人とは違う観点でみせてくる。特に手紙で大笑いなどはすのカルチャー違いの粋たるものです。

 記録と記憶の文化の違いや、死生観が全く違う。先住民は死んだら終わりという概念がない。死んだら精霊になるので、なんでお前は死に対して不安がっているのだ?と不思議がっている。また森のルールで考えるのが特徴的ですね。

 最後、カリマカテの時間の概念を無視したあの考え方も考えさせられました。カリマカテは精霊となり外国人に伝承します。そして使命を果たし消えます。カーツ大佐を殺すのと一緒です。

 なかなか面白い映画でした。自然に対する考え方も電気を使って化学繊維の服を着ながら自然は大切に愛すべきものだという奴らに比べ、自然に対する畏怖もあり説得力がありました。見て損はないと思います。