クリントイーストウッド監督の実録もの。
9.11を体験したアメリカ人には、旅客機のハドソン川着水は、切実感があったでしょうね。
マンハッタンの街のなかに大型機が突っ込んだら、どんなことになっていたか。
テーマ性は地味なので、ハッピーエンドやアクションを求める方は、初めから期待しないほうがよいかも。
お仕事映画として、抜群におもしろい。
同じ実録ものの『リチャードジュエル』では、主人公が犯人ではないと観客に映像で知らせているから、当初から応援できた。
『ハドソン川の奇跡』では、「もしかしたら機長の判断は間違っていたのではないか」という建て付けになっている。
”切羽詰まった状況における人間の判断について”がテーマでした。
2009年1月15日、乗客乗員155人を乗せた航空機がマンハッタンの上空でエンジンが停止した。
高層ビルが林立しているところをぬって飛んでいく。
機長のサリーサレンバーガーはハドソン川に着水させることに成功。
全員が生還する。
サリー機長は、ヒーローとして称賛されるが、同時にその判断が正しかったのか、国家運輸安全委員会の厳しい追及が行われる。
シュミレーターだけでなく、シュミレーターを人間が操縦して試すと、サリー機長の誤りが傍証される。
サリー機長自身も揺らぐ。
追い詰められるなか、ある人の言葉をヒントにして、サリー機長は、緊急時に下した操縦職人の判断の妥当性を証明してみせる。
人的要因を考慮すれば、論理的で冷静に絶妙なタイミングだったことが、観客にも分かるしかけ。
その終盤の再現シーンで、機長だけでなく、客室乗務員、管制官もプロとして良い仕事していたことも描かれていた。
救助に駆けつけた者達も、それぞれ最良の手立てをととのえていく。
アメリカという国は、分断分断と言われていますが、まだまだ懐が深いと感じました。
現場判断は後付けで、批判されることがあります。
身につまされました。
困難を乗りきるために、地味に見えるけど、最善を尽くすプロ意識はすばらしい。
イーストウッドの実録ものだけでなく、併せて、スピルバーグの『リンカーン』『ブリッジオブスパイ』とかも若い方に観ていただきたいなぁと思いました。
ヒヤリング場面での副機長の最後の発言、「(やり直すとしたら冬でなく)7月に着水したい」が、キマってましたね。