ヤッスン

ハドソン川の奇跡のヤッスンのネタバレレビュー・内容・結末

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

離陸から着水、救出完了までわずか30分の出来事とその後のドラマ。根本にある物語はとてもシンプルな実話で、本編の尺もそれを語るに必要なだけ短いものでとても観やすい作品。

観やすいシンプルな作品といっても重厚さは絶大。
作品は事件の後、それに伴った機長サリーの悪夢からスタートする構成が見事なのだ。
時系列は事件後にサリーが責任を追及される場面から始まり、その後ときどき様々な視点から事件を振り返る回想や、サリーの過去を垣間見るシーンが入るという構成。
はじめはこの構成にした意図が読めなかった。緊迫感のある着水から描けばインパクトのある幕開けになるからだ。
しかしこの作品が描くのは飛行機墜落のパニックではなく、それに向き合ったサリー含む大勢の仕事や働き、勇姿なのだ。事件の詳細を徐々に描いて真実へ近づく構成であると同時に、管制塔の人やキャビンアテンダントさん、川で救出を行う人々、そしてコックピットの2人、大勢の人が「仕事」で事件に向き合う。サリーが「英雄と呼ばないで」と言うのも、この作品がたくさんの仕事を描いているという強調にもなる。

大勢の意思、そして40年のキャリアが重なった着水なのだと裏付けられるラスト。最初の着水シーンで緊迫感を出すのではない、シミュレーションの穴を指摘した上でリアルに見せられる最後の「回想」が入る。最初に観る着水シーンよりずっと緊張感も偉大さも感じる見事なシーンになっているのだ。
先に回想でキャビンアテンダントの「HEAD DOWN!」の姿を見せられるから、ここでサリーが判断を迫られる場面の後ろにこの声がわずかに聞こえるだけでグッとくる。まさにそれぞれが本気で「仕事」をしている場面なのだ。

とても観やすい尺にシンプルな物語ながら、横たわるテーマやアツさ、リアリティは流石のイーストウッド監督だ。
ヤッスン

ヤッスン