nagaoKAshunPEi

ハドソン川の奇跡のnagaoKAshunPEiのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
4.5
『宇宙兄弟』という漫画のなかに、「ネクタイを締める理由はなにかって?それは、仕事が無事に終わったときに、“緩める”ためだ」というセリフがある。
つまり、ネクタイを“緩める”という行為は、服を公的なものから私的なものへと着替えるという形式的な側面があるのと同時に、気持ちをオンからオフへと緩めるという内容的な側面も併せ持っているということだ。

今作の主人公サリーにも、彼の仕事に対する内面を表した“制服”による描写が随所に見られた。
バードストライクという明らかに不可抗力な事故があり、彼自身も不意に事故に巻き込まれた被害者である。そうでありながら、一飛行機の機長として毅然とした態度を取り、常にどこかに落ち度はないか?見落としはないか?とあくまで仕事を全うする姿が見受けられる。
その緊張感は、事故が起きて不時着したハドソン川から離れたホテルの一室でも緩まることはなく、副機長はバスローブに着替えてるのとは対照的に、あくまで制服を着続けている。そのことから、乗客や添乗員含め飛行機に乗っていた全員の命が無事と伝えられるまで、自らの仕事は続いているという機長としての責任感が垣間見れるのだ。

サリーはあくまで、この奇跡とも呼べる不時着事故は、この事故に関わる全ての人間のチームプレーによってもたらされたと、謙遜してみせる(もちろん真意でもある)が、サリーという真摯に仕事に取り組み、ベターの中からベストの選択肢を選べる人間がいなければ成し得なかったことだろう。素晴らしい「お仕事映画」だった。
nagaoKAshunPEi

nagaoKAshunPEi