MARUKO

ハドソン川の奇跡のMARUKOのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
4.8
これが100分無いのか!?一点の曇りなく完璧。お手本のような映画。日本で作ったら簡単に前編後編とかにするんでしょうが、イーストウッドにそんなことはいらない。一切無駄なくシャープで濃厚で素晴らしい。

(IMAXで観たときの鳥肌が蘇った二回目の観賞)

誰かを英雄視する映画は一方的に美化することで、他方の立場に立ったときに違和感を覚えることがある。しかし今回の話は紛れもなく英雄。だから余計に映画が美しく見えた。
サリーに焦点を当てていることも素晴らしい。

飛行機シーンを大袈裟に感動的に描いていないということ。
彼がなした事実がすべてを物語ってるでしょ?と言わんばかりに。
忠実だから“助かった!感動の涙!”ではなく混乱と動揺、衝撃が画面を支配する。その緊迫感に観ていて肩に力が入る感覚がわかる。エキストラ一人一人の表情誰を見ても本気なのがそれをより強調する。

サリーの心理描写がシンプルで大胆。
サリーが何を思い、何を感じるかがこちらにダイレクトに伝わってくる。
回想の差し込み方も流れもいい。音も音楽も映像も全部いい。言うまでもなくトムハンクスの演技も素晴らしい。
すべて最高水準。

サリーの一言一言が重く美しい。
“誇らしく思う”には痺れた。
そしてラストの一言。
ジェフが実際に言ったのかどうか知らないが、この話をクスッと笑わせて終わらせるとは、なんてことするんだイーストウッドは!
実話だから主人公のキャラクターがどうとか、セリフの意味とか、物語がどうとかは問題にはならない。
しかしそれをフィクションの感動作と相違なく感じさせるまでに完成度を高めた本作は、本当に素晴らしいと思う。
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