マクガフィン

森山中教習所のマクガフィンのレビュー・感想・評価

森山中教習所(2015年製作の映画)
3.2
自動車教習所を舞台に、大学生の清高(野村周平)とヤクザの轟木(賀来賢人)の対照的な同級生のひと夏の友情を描いた物語。原作未読。

のんびりとした田舎での非公認の風変わりな教習所で、家庭に問題を抱えた個性的な面々が集まったオフビートなひと夏限定の疑似家族的に。少年のような笑顔でフリーダムな大学生の清高の脳天気さは家庭問題による自己を保つためのカモフラージュのようで、同級生のクールなヤクザの轟木は対象的な性格だが互いに問題を抱えることで、ゆっくり引き合うような関係に。

免許を取ることで自由になる清高とヤクザ世界に戻るので不自由になる轟木だが、寄り添うことで、互いの人生で欠落してた幸福を僅かに埋め合いながら少しずつ変化していく成長譚に。つかず離れず的な干渉をしない教習所から半径1km以内の男同士の友情的な距離感が絶妙で、一見、空気を読まないような2人のキャラのギャップを盛り込む友情関係に心地よさが漂う。

撮影時間の影響だと思うが、もっと紺碧の空などの背景美やメタ的映像を挟まないと、のどかで笑いの中に将来の不安や哀しみや夏の終わりを告げるような刹那的な儚さの演出に弱さを感じて残念だが、ほろ苦いノスタルジーが漂うテイストは好き。

人生の交錯模様を象徴的に描いた別々の道へ進むラストシーンは、叶わぬ運命を受け入れるかのような、何とも言えない2人の表情に心を掴まれる。映画を見て漫画を読みたくなったが、2年近くたつがまだ見ていない。夏までに見ようかな。