たまこ

アノマリサのたまこのレビュー・感想・評価

アノマリサ(2015年製作の映画)
3.9
マイケルには、自分以外の人間全員が同じ顔に見え同じ声をしているように聞こえてしまう。そのせいで人生に退屈していたが、出張先で、顔も声も他の人とは異なるリサと出会い親交を深める。

チャーリー・カウフマンが全編ストップモーションアニメで描いた、孤独な男の不思議な話。
昨年の『もう終わりにしよう』は超難解だったが、こちらのストーリーはわりと分かりやすい。

しかしボーッと観ていた私は、マイケル以外みんなおんなじ顔&おんなじ声なことにも気づかず「?」が残り、ラストまで観た後すぐに初めから辿り直した。
日々の何気ない動作一つ一つを丁寧にアニメで表現しているので、2度目はその仕事をじっくり堪能できた。
そしてもう一つ気づいたのが、タクシーの運転手やホテルのポーターとのつまらない世間話とか気まずい間とか、日常の空気感までが細かに描かれていたこと。

私もいわゆる“small talk”というものが苦手である。たいして仲良くない人と中身のないトークを続けるよりも、気まずい沈黙の方がマシだと思ってしまう。更に、「この人は他の人とは違う!」と恋したはずの相手が、ある時を境にまるで魔法が解けたように普通に見えてしまうのも経験がある。

だから、マイケルの抱く孤独感は少し理解できる気がした。
(とは言え結局やってることはクズなんだが…。)

そしてなんと言ってもこの映画の見どころは、マイケルとリサのベッドシーンだろう。
人形でこのシーンを表現するために、並々ならぬ歳月と労力が注がれたそう。
こんなにカッコ悪くて可愛くて、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいリアルなベッドシーンは初めてである。

芸術的な画に加えて内容は哲学的で、目にも心にも焼きつく素晴らしい作品だった。
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