アベ二ティKazumaAbe

アノマリサのアベ二ティKazumaAbeのネタバレレビュー・内容・結末

アノマリサ(2015年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

周囲の人の声が全て同じに聞こえ、男女問わず皆同じ顔に見えるという精神疾患を患った男を描くストップモーション・アニメ。電気グルーヴPV『モノノケダンス』のラストもかくや!という非常に特徴ある心象シーンといいかなり実験的な一作。

無味でフラットな生活の中、彼はある日まともな女性の声を聞く。「他と違う人だ!」必死にその声の主・リサという女を追い、きちんと個性を宿した面立ちに恋をする。しかし、理想と異なる彼女の性質が見えて来ると皆と同じ顔に見え始め、声も無機なものに変わっていく…。『アノマリサ』は変質・特異を表すanomalyとヒロインの名前であるLisaを合わせた造語で、観終わると非常に切ない気持ちになるタイトル。愛すらも自分を守るためのエゴに過ぎないと伝える物語が重い。

登場する人物以外、日常風景のセットはガラスの水滴・照明に至るまでほとんど本物に見えるように作り込まれており、余計に人物の“異物感”や不自然さが強調されていた。ベッドにかかる重みにまでギミックを用意、凝りに凝ったセックスシーンの艶かしさは見もの。メイキングを観ると、抱き合う二人を密着させるためにパペットの腹を空洞にするなどの工夫が面白かった。