Inagaquilala

RE:BORNのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

RE:BORN(2015年製作の映画)
3.6
物語途中から長々と続くアクションシーンがこの作品の売りなのだろう。敵の本拠地に侵入するため、主人公たち3人は山を登っていく。樹木の間に配された一個中隊といくつかの小隊。それらの熟練兵士たちを相手に、主人公は拳銃を持たず、刃物と拳だけで闘う。そのアクションはなかなか意外性に富んでいて、バラエティーもあり、退屈はしない。ただ、このシーンは長い。

上官との齟齬から特殊部隊を脱け出した主人公。いまは北陸の片田舎の町で、コンビニの店員として働いている。彼はひとりの少女と住んでおり、どうやら尋常ではない過去を負っているのだということがわかってくる。組織を抜けた彼に刺客が送り込まれる。町の広場のようなところに配された暗殺者たちを、主人公はそれこそ時候の挨拶をするかのようにかたづけていく。彼は自らの存在を消し、対象に近づくことから、「ゴースト」とも呼ばれている。

物語の設定は興味深い。いまは市井の人間として息をひそめるかのように生活している元特殊工作員の主人公の描写はかなりきちんとしている。町の広場で見せる静かなアクションシーンも素晴らしい。彼の過去を知る盲目となった元同僚の存在も悪くない。いったい彼がどのような人生を背負ってきたのか、大いに興味が湧くのだ。そういう意味で言えば主人公のバックストーリーはきちんと書き込まれた脚本だ。

ただ、やはり冒頭でも書いた、長いアクションシーンが始まると、それらの物語は一斉にストップしてしまう。それが売りなのはわかるのだが、そしてそれを見せたいのも理解できるのだが、せっかくきちんと物語をトレースしてきたのに、この長い闘いのシーンで、それがいささか停滞していくのが残念だ。レイトショーにもかかわらず、場内はほぼ満席状態。公開も延長されたと聞く。確かにアクションシーンは本格的で、独創性にも満ちている。ただ、物語との整合をもう少し巧みに考えていたら、かなりハイクオリティな作品になったのではないかと思う。ただ、並みのアクション作品ではないということだけは言っておこう。
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