えんさん

ボクの妻と結婚してください。のえんさんのレビュー・感想・評価

2.0
放送作家の三村修治は、人気バライティ番組の企画を数々考えてきて、業界では売れっ子の放送作家として活躍していた。そんな修治の活躍を素直に妻も、息子も応援し、愛してくれる幸せな家庭を築いていた。そんな中、体調の不調を感じた修治は慣れない病院にて、突然の余命6ヶ月を宣告される。絶望とともに彼が考えたのは、妻・彩子のために最高の結婚相手を探そうということだった。そして、理想の相手・伊東正蔵と遭遇する。。樋口卓治の同名小説を、「県庁おもてなし課」の三宅喜重監督と、「踊る大捜査線」シリーズの織田裕二主演で映画化した作品。ちなみに原作自体は、内村光良主演で舞台化やTVドラマ化もされていたりします。

上記のあらすじを書いていて気づいたのは、今年リバイバルで見た「生きる」に作品の設定は似ているということ。ただ、「生きる」の勘治と、本作の修治(名前が似てますが、、)が決定的に違うのは、勘治は生きているという感覚のなかった毎日に対し、余命に対して執着を感じたこと。対して、修治は仕事も家庭も充実した毎日に対し、余命よりも遺された家族のことを考えたこと。設定も、遺すものも実は全く真逆な形になります。勘治はとことん自分のために余生を”生きる”ことになるのですが、結果的に彼が一所懸命に取り組んだことが、多くの人の心を動かすことになること。対して、修治は遺される家族のためにと動くのですが、結果的には、、、と、ここはネタバレになるので避けますが、この終わらせ方が、個人的にはうーんと思ってしまうところなのです。

作品としては、中盤までは凄く意欲的なことを描いていると感じました。死ぬということは、人生という大きな舞台を降りること。産まれると同時に上がったこの舞台では、多くの人と関わりながら歩んでいくわけですが、死とともに、どんなに後ろ髪を引かれようが、その舞台からは降りないといけない。家族、友人など、その舞台に遺された人々に対し、できることといえば、遺産というモノの形で遺したり、教えや考えなど生きている間で意思として遺したものがせいぜいでしょう。それが本作では、その舞台の人と人を新たにつなげて、遺された人にとって新しい舞台を提供しようとするのです。これは世もすれば、この映画を通じて死ぬ行く後のことを考えた新しいつながりの形を提供するようなインパクトをも提供するのかな、、と思いましたが、(感動はするものの)死にゆく人にとって、思いもよらぬラストにはいささか不満が募る形になったかなと思います。

それにしても、妻役を演じたよう吉田羊は今が旬ですね。旬すぎて、いろんな作品の役柄が被ってしまうのが正直混乱してきます。。本作と、「グッドモーニング・ショー」では同じような妻役で被っているし。近作では、作品自体は低評価しましたが、「SCOOP」の編集長役が一番合っていたかなと思います。ちと古いかもしれないですが、浅野温子のような男っぽい、きっぷの良い女性って、いつの時代も人気が出ますよね。