この暮らしに出口はあるの?
レクイエム・フォー・ドリームの作者、ヒューバート・セルビー・ジュニア原作。
クリスチーネ・F.のウーリー・エデル監督。
これだけである意味説明は充分なのかもしれない。
これは「もちろん」、鬱々とした、人々のドン底の生活を描いた群像劇である。
1952年ブルックリン。
85番街では街の主幹産業と思しき企業の現場工場のストライキ中。
昼夜を分かたず健全な活気は喪われ、街中に蔓延るのは無軌道な暴力と欲に生きるチンピラやヤク中、時の世にはまだまだ到底認められないゲイを始めとするセクシャルマイノリティたち、朝鮮戦争への出兵に待機する様々な輩、それに群がる夜の女たち。
全てが閉塞した環境の中、日々は非道と非日常が混合し、スト闘争の騒乱もどこか日常から逸脱した「祭り」のよう。
明日なき戦場へ赴く新兵たちも同様、もとより日常などはとうに故郷へ置いて、心からは遠く離れている。
この街がどうあろうと構う者は少ない。
自分の明日がどうなるか、それすらも見えないのだから。
薄暗く、静かなる地獄のようなこの街でも、時に真心は交わされ、市井の人は営み、儚い夢は羽を持ってゆらゆらと漂う。
この街からの、居所のない現実からの、
最後の出口を探すように。
どうか泣かないで。
きっと今が一番、悪い時なんだから。