さうすぽー

リップヴァンウィンクルの花嫁のさうすぽーのレビュー・感想・評価

3.9
自己満足点 77点

岩井俊二が黒木華を主演に迎えて製作された3時間の大作!

リップ・ヴァン・ウィンクルの物語は、主人公が山中で出会った一団に酒を飲まされ、目を覚まして山を降りると何年もの年月が経っていたというストーリーだそうです。
タイトルの意味を調べて初めて知ったのですが、いわゆるアメリカ版「浦島太郎」といった感じですかね?

黒木華演じる主人公が最初リップ・ヴァン・ウィンクルのようになってしまうのかと思っていたのですが、映画見終わってよくよく考えてみるとリップ・ヴァン・ウィンクルだったのは真白なんじゃないか?そう思い始めました。
親との関係や自分の職業における苦悩等、様々な理由が重なり、世間から隔離されたようなあの建物に住み着いたのではないかと。
ただ、あくまで自分の考察です。


この映画、1時間ごとに物語がだいぶ変わるのであらすじを説明すると一口では難しいです。
強いて言うなら、黒木華演じる皆川七海が綾野剛演じる奇妙な人物と出会うことで変わったアルバイトを行っていく話。

よく前半が退屈という声を聞きますが、個人的に前半のストーリーは面白いです。
黒木華演じる七海が婚約者や綾野剛との関わりに触れていく度に不運が起こっていく様は人によっては胸糞に思えますが、自分はこの流されやすい黒木華にイライラしてしまうため、転落していく様を観るのは「これからどうなるんだろう?」とワクワクして観てました(笑)

こう書いてると、自分は結構ひねくれてるかもしれません(^_^;)

後半は綾野剛に雇われて変わったバイトを始め、その過程からCocco演じる真白と出会う話ですが、正直前半と後半はストーリーがだいぶ違います。
それについては後述しますが、後半のストーリーもかなり好きです。

後半は真白と七海の交流がメインになりますが、特に終盤の真白の台詞は非常に考えさせられました。
ネタバレになるので書けませんが、
「優しさは時に人を傷付ける」という事を体現していて、改めて「幸せとは何だろう?」と考えさせられました。


演技についても触れます。
主要人物3人とも素晴らしいです!
黒木華は優柔不断で流されやすい主人公でこちらまでイライラするほど上手いし、安室を演じた綾野剛もいかにも胡散臭そうな人物像を体現していました。
一番驚かされたのはCoccoさんですね。
歌手としての姿しか今まで観たことが無かったので、役にはまるとこんなに素晴らしい演技が出来るのかと驚かされました!


さてここまで絶賛してきましたが、何故3.8というスコアなのか。
ストーリー構成の歪さにあります。

これは岩井俊二自身の作品あるあるではあるのですが、「スワロウテイル」でもストーリーが前半と後半で別々の展開を歩む構成になっています。
スワロウテイルの時はその違うストーリーを上手く着地点に到達出来てはいたと思うのですが、本作は個々のエピソードが素晴らしい代わりに個々の組み合わせが上手く出来てなかったように感じます。
個々のエピソードは一応繋がってはいるのですが、ラストで綾野剛の目的や行動を明かしたりすることで繋がりが自然になるのではないかとも思います。
それが無いので、映画終わった後でも「あれ、そもそもどういった物語だったっけ?」となって混乱してしまいます。


とは言え、この3時間という上映時間としては比較的退屈に感じない作品でした。