R

リップヴァンウィンクルの花嫁のRのレビュー・感想・評価

5.0
映画好きの人のTOP10リストからランダムに作品を選択し鑑賞する第5弾! 正直まったく期待してなくて、しかも180分という長尺で、ハズレだったら相当のダメージを喰らうな、と思いながら見始めた。大学時代、同監督のPicnicという映画を見たことがあって、うーわ、この人の映画肌に合わんわーと思い、それ以来ずっと避けてきてた、故に期待値激低。が! しかし! これがめちゃくちゃ面白かった!!! 岩井俊二監督作品への関心が俄然高まった! 本作最大の魅力は、何より二転三転どこに向かっていくのかまったく読めない、めくるめくストーリーの展開。主人公は黒木華の演じるナナミという女。ネットでだれでもどこでもどんな情報でも簡単にアクセスできる今の時代、現実にこんな女おるわけねーーー! 監督の妄想やーーー! と本作最大のツッコミを入れたくなるボクなのですが、ほんとに気になるので、見たことある人に聞きたい、こんなナイーブな女、実際存在するのですか?? まぁけどこの前提は飲み込んだ上で、でももうそれはどーでもええわ!!! ってなるくらい面白い! ナナミは出会い系アプリで出会った男と即日セックス(しかも、そのことをネットでツイートまでして、んーやっぱキャラ設定ちぐはぐ! まーいいや!)からのとんとん拍子でご結婚までゴールイン。なのに、相手には、実はナナミの両親がすでに離婚してること、知らせてません。しかも、ナナミ側から結婚式に出席する人が少なすぎて、ネットで知り合った安室という名の怪しい何でも屋さんに、フェイク結婚式出席者をひとセットご注文。序盤の時点で、本作のテーマ、ネットにおける虚構、実生活における虚構が、ヴィヴィッドに浮かびあがってくる。その双方が同じくらい虚構ということ。そのことが「結婚式」という日本最大の虚構イヴェントに明らかにされる。まず君たちはクリスチャンじゃない。神父も偽物(ただの雇われ外人)。「純白」のウェディングドレスも偽物、「ヴァージン」ロードも偽物、「永遠」の愛も偽物(→事実間もなく終了)、式次第もすべて型通りのただの型。型通りの畏まり。型通りの感動。作られた演出。結婚式の中身すべてが偽物だらけ。そこに、ナナミが偽物の親族を置いたからと言って、誰がそれを責められようか。最初から全て偽物なのに。案の定、いとも簡単に彼らの結婚は破綻に向かう。男と女というのは「永遠」に厄介なもんですから、と何でも屋の安室は言う。なぜか最近よそよそしい夫に疑いを持ち始めたナナミは、何でも屋の安室に浮気調査をお願いすると、そんなことするまでもなく、夫の浮気相手の彼氏がマンションに攻め込んでくる。夫の浮気を確定。そして、なんと、その浮気騒動が、とんでもない方向にナナミの人生を激変してしまう……という話で、とにかく、ぜんぶ偽物、ぜんぶ詐欺、というお話がとんでもない面白さで、次々とエピソードを数珠つなぎにして進んでいく。もう途中から、すごすぎる……すごすぎる……と唖然としておりました。さて、映画もかなり進んでから、ようやくタイトルのリップヴァンウィンクルが登場します。それを演じるのが歌手のCocco。そう、最初、本作を見る気がまったく起こらなかった理由がCocco。昔、Coccoが出演してるKotokoという映画を見て、具合が悪くなった記憶が鮮烈に蘇ったため……ただ、本作で、なるほど! Kotokoの CoccoがあんなだったのはKotokoの監督のせいだったかと! 本作のCoccoはすばらしいです!!! まず、顔が派手すぎて凄い。目も鼻も口もすごい、手足の長さも、背の高さも、なんかすごい。ナナミという存在のアンリアルさが完全にボヤけてしまうほど、Coccoのアンリアルさがすごい。出てきてから出てこなくなるまでずっと釘づけでした。彼女も偽物、ナナミも偽物、と、何もかもが偽物のなかで、唯一、本物が生まれる瞬間!!! すごい!!! すごすぎる!!! もうこのあたりになると呆然自失、、、全身鳥肌たってしまいました。けど、本物はあっという間に消えてしまうんですね……後半は、いよいよ、安室という男が謎でしかないのだけれど、このキャラの曖昧さって、何となく、インターネットそのものの象徴なのかな、と感じました。ネットってまさに何でも屋じゃないですか。そして、何が本当で、何がウソなのか分からない、てか入り混じってる。安室の非人間性って、まさにネット世界の非人間性みたいだなーと。この男を演じるのが綾野剛。正体不明の詐欺師っぽさが雰囲気にピッタリ!!! ひとつめちゃめちゃ気になったのが、この人の舌の出す音。こういう発音の人たまーに出会うけど、そのなかでもとりわけ癖が強い気がする。演技でそういう音出してるのか、もともとそうなのか。これが演技だったらすごい。こんど他の出演作見るとき気をつけて聴いてみよっと。「気をつけたほうがいいですよ」が、「気をつけたほうがりいですよ」に聞こえる。すげー変わってる。ずっと気になりました。綾野剛は本作でヌードになりますが、色気は全然なかったっす笑 あと、個人的に胸を突かれたのが、Coccoがベッドでキスするシーンのキスの仕方。あー、こんな感じでキスしてたとき、ボクにもあったなーとめちゃくちゃ懐かしくてノスタルジア。なんだか切ない気持ちになりました。映像もめちゃくちゃカッコいいし、かの有名な音楽の数々も映画全体の雰囲気にぴったりやし、コレは全日本映画のなかでそうとう好きな部類に入ってしまいました……やられました……ほんでまた最後の最後も、本作唯一のアンリアルなリアルで幕を閉じる。ボクは、何が何でも、自分の信じるリアルを追い求めて生きていこう✊と、決意をますます固くしました。そういう意味でもめちゃくちゃ良かった!!! ちなみに、本作をご覧になって、ぜんぶニセモノ……というテーマが好きだと思われた方には、ちょっとだけ似たテーマの、紙の月という作品をオススメしたいです。またはvice versa。是非!!! これはBlu-ray買ってもイイくらい好きやった!!! ちかぢか買ってしまおかなー。
R

R