ユミコ

リップヴァンウィンクルの花嫁のユミコのレビュー・感想・評価

-
ずっと気になっていたけれど3時間の長尺に躊躇っていた。でもやっぱり気になって気になって…

どんなストーリーかなんて、予告をたまたま目にしたでもない限りいつも予習なんてしないし、もちろんこれもそう。とある女子の結婚を描いたものかなってくらいに思っていた。でも、ぜんぜんそんなありふれたものではなかった。
全体的には静かに流れる雰囲気なんだけど実は色々ありすぎて全く退屈しないどころかむしろ面白い。そして詩的なようだけどかなりリアル。どこか古めかしいのに、出来事は全て現代の事ばかり。

主人公、七海(黒木華さん)がお見合いサイトで知り合った男性と初めて会うその待ち合わせのシーンから始まった。
「お見合いサイトで彼氏を見つけた。ネットで買い物するみたいにあまりにもあっさりと手に入ってしまった。ワンクリックで。」
そして結婚へ。でも‥‥。

なんでも屋なる安室(綾野剛さん)が登場して流れが変わる。彼は七海が困った時、行き詰まりそうな時、職業柄すぐ駆けつけてくれる。頼もしくて、素敵に見えた。
私は、彼の存在はやがて最低以外の何ものでもないとまで感じてしまうことになってしまった。七海があまりにも利用されやすい人間だった事にイラッとする。だからこのような巧みな話術でもって詐欺まがいなタイプの なんでも屋なる男に騙されちゃうんだ。

七海はやがて安室を通じて、真白(Cocco)というAV女優を生業とする女性と出会い、特に、深い闇を抱えながら生きてきた真白にとって七海は大切な存在となり、やがて互いに好意を抱くようになる。この2人の絡みは一番美しいものだった。

安室という人物がわからないまま、ふたつのクライマックスと言えるシーンに突入する(私は ふたつあったと思ってる)。どちらも忘れ得ぬシーンで、特にふたつめのそれは涙が止まらない。ここまで泣き続けてしまうことって、あるんだ……
まるで自分にリアルに起こってしまった出来事であるかのように。それは悲しいわけじゃなく、可哀想でもなく、かと言って喜びの高ぶりでもなく、いったい何だったのだろう……

いくつかの静かなクラシックの名曲が流れ、この作品のために作られた曲であると錯覚してしまう程の馴染みようったらない。特に「G線上のアリア」なんて似合い過ぎていた。


岩井俊二監督の作品を観たのはこれで2作目だけど、前回のものの好きな部分がいっぱいあって心地よかった。
主演の黒木華さんは以前、ドラマ「重版出来!」でも主演をされていて、全て観た好きなドラマだった。キャラが全く違っていたのに不器用な女子という部分で共通していて何か可愛かった。
ユミコ

ユミコ