ぐっない

リップヴァンウィンクルの花嫁のぐっないのレビュー・感想・評価

4.8
家にいるのに、「家に帰りたい」と思ってしまうことが、ときどきある。それは、ここは家じゃない、みたいな意味じゃなくて。そうじゃなくて、でも、どうしてそう思うのかはわからないの。大切な家なのに。どこに帰りたいんだろう。


わたしは、わたしの悲しみに全然自信がない。本当に悲しいのか、自分に酔ってるだけなのか、被害妄想なのか、全然わからない。悲しいと思っているわたしと、そんなこと悲しみじゃないよって言っているわたしがいるのだ。だから結局考えるのをやめて、適当に決めちゃう。

でも、少し前、悲しいことがたくさんあって、ちょっと泣きそうだった。けどその悲しいことも、きっとそんなに悲しいことじゃなくて、言葉にするほどのことでもなくて。でもなんか、ちょっと泣きそうだった、ずっと。あとひとつ悲しいことが起きたら泣いちゃうかもなーって思いながら、ヘラヘラ生きてた。そんなとき、あるひとが優しい言葉をくれて、びっくりするくらい泣いた。わたしが欲しかったのは、悲しいことじゃなくて優しさだったのかーって思った。

ひとの優しさはすごいんだよ。ほんとに。この映画を見て、涙ぽろぽろ出てきて、そう思った。ひとの優しさって、ひとを生かすんだよ。今じゃなくても、あとから効いてきたりするんだよ。真白さんが無邪気に笑うと、カラカラと音がするみたいだった。わたしと一緒に死ねる?って聞いて、頷いてくれて、そのあとに死ねるの、幸せな死に方だと思いました。


「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」って、その通りだなあ。私も昨日、海をふたつ見ました。電車の窓から外を眺めていたら、いつもはとても汚い川が、太陽の光を反射して、きらきら光ってた。海みたいに。予備校でパソコンのデスクトップと向き合っていて、疲れて画面を指でトントンってしたら、海に石が跳ねていくみたいだった。面白くて、ずっとトントンってしてた。よく見たら、こんなにあるんだなあって思った。本物じゃないけど、偽物だけど、とても綺麗で。帰り道、鳥がわたしの頭にぶつかって、その鳥は方向転換して飛んでいった。不思議な日だった。


みんな泣いちゃえばいいね。もう全部抜きにしてさ。ばかやろーこのやろーで。自分の気持ちだけで。生きるのやめたいなあって思っても、いつかの生きたいのために生きてしまう。生きたいが、この世界には案外たくさん転がってて。
わたしもたくさん名前を持っているけれど、どれが自分かなんて一生わからない気がする。なんにも答えられないね。でも気づいたら、生きてるもんね。
ぐっない

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