オンライン映画館「リビングルームシアター Living Room Theater」で鑑賞。
オンラインシアターを利用するのは、今回が初めて。1800円で24時間、いつでも何回でも観られます。
他にもオンラインシアターは色々ありますが、いつ観てもOKなのは、常に子どもに振り回されてる私には大変ありがたいシステムです。
『凱里ブルース』は新鋭の監督として世界から注目を集める、ビー・ガン監督が26歳の時に撮った長編処女作で、国内外の多数の映画賞で受賞しています。
貴州省・凱里はビー・ガン監督の故郷で、中国の少数民族・ミャオ族の中心地。
ちなみに主人公のチェンは彼の叔父が演じていて、プロの役者は2人しか登場しない、インディペンデント作品です。
主人公のチェンはチンピラ時代、ボスの代わりに罪を被り、9年の懲役に服します。刑期を終え凱里に戻ってきたチェンは、母の友人でもある老女医師の診療所を手伝いながら、暮らします。塀の中にいた間に母も妻も亡くしたチェン。そんな折、とてもかわいがっていた甥のウェイウェイが売られたことが発覚。チェンはウェイウェイを探しに、鎮遠(ジェンユエン)へ向かうのだったーー。
というのがあらすじですが、劇中でチェンが「全部が夢みたいだ」と呟くように、彼の夢の話が永遠と続いているようにも感じられました。
亜熱帯エリア特有の濃い緑の山々や、ねっとりと重く暑い空気感、すぐにエンストするバイタクシー、屋根の水漏れで水たまりのある床の描写など、異次元の場所のようでもあり、古里のようでもあり……。
監督は結婚式のビデオ撮影のアルバイトをしていたそうで、「テーブルからテーブルを渡りロングテイクで撮影することは、夢のように解放的なものだと気がついた」とインタビューで語っています。
エンディングまで41分は、ロングテイク。淡々とチェンと凱里の風景を映していますが、この長回しが独特の夢物語感のファクターなのかもしれないと感じました。
しかし、当時撮影してもらった新郎新婦は今、どう思っているんだろう……羨ましすぎる!
今まで映画を観てこんな感覚は感じたことがなく、とても魅了されました。
まるで凱里を旅し、たまたま出会ったチェンの行末を友人とも知人とも言えぬ立場で傍観しているような。そんな感じ。説明するのが、すごく難しい汗
1990年代をイメージした作中の風景と、現在、観光地化され近代的に変化している凱里はは少し違うかもしれませんが、死ぬまでに旅したい土地がひとつ増えました。