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劔岳 点の記のjunjuoneのレビュー・感想・評価

劔岳 点の記(2008年製作の映画)
3.3
こりゃ2点台だな、、と思って途中まで観てましたが、観ているうちにいろいろこの映画の味を感じられるようになってきて、最終的にこの点数です。

黒部立山アルペンルートを旅して剱岳を望み、帰宅後すぐにこの映画を観ました。

実話であり、測量士にスポットを当てたテーマ性を感じる題材であり、良い役者を使っていて、トレイラーもとても名作感を煽る印象だったので、重厚ながらも安心感のある作風なのかと思って観たら、ある意味期待をかなり裏切られた。

せっかくドラマが生まれそうな場面をことごとく盛り上げないセリフのやりとり。
雪崩や落石、熊やハサミムシのアップ。。
何をメタファーとしてるのかわからない、唐突な展開に心構えをさせない微妙なタイミングでの画の放り込みとシーン割。

測量士たちの哲学にスポットを当てて深掘りしたら面白そうなのに、とか、
なぜ山に登るのかというやりとりをせっかく作ったのにお互いノーコメントで次のシーンに移るのかとか、
山岳会やら修行者やらと共闘すれば一つのプロジェクトとして成功しそうなのに、なぜ彼らは交わうことができないのか、時代的な特性にスポットを当てるとか、
案内人のモチベーションは詰まるところなんなのか、とか、
イチモツもってる若造役の松田龍平に台詞を口籠らせるとか、、

この監督、あまり人間観察しないんだろうな、と感じてしまうような作りでした。映画としては。

映え写真のスライドショーをSNSに投稿するような感覚で映画撮られてるのかな、という感じがしました。

でも、前提を見つめ直せば、明治時代の実際の剱岳の測量の工程を忠実に再現したということがメインの楽しみ方なら、この景色、役者の本気の登山、これらを讃えてやまないのはもちろんのこと、むしろシナリオ的にも、軍部からのプレッシャーやら里で待つ妻とのやりとりやらドラマを感じさせる部分は努力的に取りそろえられておりますし、、

ある意味山の上では抑揚ある人間ドラマは死の危険を誘う罪作りな所業なのかもしれない、、
荘厳な景色を刮目してほしいがためにあえて、映画的ドラマにうつつをぬかさせないように抑揚なく作られている、、
とも思えてくる。
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