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ジュラシック・ワールド 炎の王国のrollinのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

(※スコアを5.0→5.5に上方修正しました!)

「『怒りデスロード』×『ピーターパン』という、嘘みたいな映画を見た!夢だけど、夢じゃなかったぁ‥!」と、起きてからずっと草壁姉妹みたいな映画祝詞を繰り返している。

“一般的な倫理観を逸脱する選択をした人間の全肯定”という、僕が感じるバヨナ監督作品に共通するテーマ。ギレルモ監督に通じる古典怪奇映画の遺伝子。スペインが経験した内戦と独裁の歴史が監督の作家性に与えるムード。“ジュラシック・パーク2”を手掛けるのに、これほど相応しい資質を持つ人はおらんじゃろう。

ピタゴラスイッチのように整理されたアクションの作用と反作用。怒涛のテンポ。そこにセンス漲る画チガラと、あまりにCG過ぎた前作の欠点を補うアニマトロニクスの質感が相乗し、明け透けなことこの上ない至上の娯楽作品が誕生してしまっている。ジョン・ウィリアムズのテーマも、ここぞという時にさらっと漂わせる程度に抑えているのも良いし、恐竜の口の中をはっきり見せる演出も流石!『ハン・ソロ』になかった感覚はこれだっ!

冒頭、海底で朽ち果てたインドミナスから肋骨を採取した探査艇の“上空”に浮遊するモササウルスの魚影。これはもう『ローグ・ワン』のジェダ上空に停泊するスター・デストロイヤー並に素晴らしいレイヤー構図であるし、今までのシリーズではあり得ないカット。

本作では人間の会話シーンなんかつまらんのじゃ!ということを映画自体が自覚していて、物語は足早に既視感バリバリのロスト・ワールド展開へ突入する。それってつまり『エイリアン2』のジェームズ・キャメロン的ビッグマック展開を2018年にやろうとしているのか!と、胸を躍らせていたのだ僕は。


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①イスラのデスロード編

クライマックスである。
もちろん島という限定空間、噴火によるタイムリミットというオイシイ舞台設定は言わずもがな。
このパートが見事なのは、巨大なモチーフを巨大たらしめるアオリの構図が、物語的な説得力をもって終始徹底されている点。つまり噴火する火山を頂点とした大地の傾斜、足元に押し寄せるマグマや火砕流が、対象をアオリ構図で捉えることに必然性を与えているのでがんす。

そして間違いなく主役は火山。ゴジラ映画のゴジラが、本作では火山なのだ!つか画ヂカラハンパなさすぎやろ!!
さらに感動的なのは、個人的な推し竜であるトリケラトプス、シノケラトプスといった角竜、周飾頭亜目へ最高の花道を用意してくださったこと。肉食系最強候補アロサウルス(幼体)の狭所アクション。ティラノ師匠の伝統芸能・プライマル・スクリーム!!首の長いブラキオサウルスをあんな演出で使うなんて‥人が悪い(最高)!!

カタルシス度で言えば、終盤に配置すべきこのイスラ・ヌブラル編を、敢えて前半に持って来たこと。終電時間近くの居酒屋に於ける「まだやってる?」「あと30分で看板だよ?」の流れの如き怒涛の入場即退場劇。それは我々の親しんだパークの終焉であり、同時に新たな生態系の誕生でもあった。


②バイオハザード(ディノクライシス)編

本気だ。
どうやら後半は、本気でこの屋敷を舞台にやるつもりらしい。監督は必要以上に狭所に拘っている。恐竜たちを閉じ込め、抑圧し、来るべき時を待っている。シリーズが溜め込んでしまった業。そのすべての膿をここで出してしまおうというのだな!よし、付き合います!

ロスト・ワールドを踏襲した周飾頭亜目(スティギモロク)の活躍。最凶の殺戮兵器どころか、屋敷専用の追跡者として、まさにこの舞台のためだけに生み出されたインドラプトル!(シンプルにかっけぇ!)そして引導を渡すのはトリケラトプスの角!
影と古城のモチーフは『フランケンシュタインの復活』を彷彿とさせるし、もっと言えばインドラプトルは、ウェンディの部屋へ忍び込んだピーターパンのよう。
ゴシック・ホラーの様相を呈し始める転換は、『エイリアン2』から『エイリアン』への逆進化でもあり、ホラー映画として、より研ぎ澄まされていく感覚がある。つまり後半にこそバヨナ監督の真価が発揮されておったのでがんす。

何なら後半は屋敷を比喩的に用いた少女メイシーや恐竜たちの内面、精神世界と言っても過言ではないし、前半と反復しながらも、よりタイトに描かれる絶滅と解放のエネルギーは凄まじい。(ブルーとインドラプトルの母子関係はもうちょっと強調しても良かったんちゃうか?)

あと、何気に本作の構成が素晴らしいのは、冒頭の海、中盤の火山、後半の雨という環境にもあって、これは生命誕生までに地球が体験した環境変化のリサイクルみたいやおまへんか。

ロスト・ワールドから前作までの三作品はもちろん大好きだ。なんせ一番の推し竜はスピノサウルスだかんね。ただし、劇中世界の大人たちがあまりにアホばっかで、最後のボタンを押す責任から逃れていることは、個人的にシリーズの限界を感じさせることでもあった。
リブート、ユニバース化が盛んな昨今の状況に於いて、本作はシリーズを破壊しかねない程の危険な賭けに出て、その限界を突破した勇気ある作品だと僕は思う。
大人たちが背負おうとしない責任を、最も残酷な方法で少女に肩代わりさせた悪魔の所業だ。(ボタンを押す時のあの台詞だけは萎えポイント)でもいいぞ!もう行けるとこまで行っちまえ!!

ここに『ジュラシック・パーク』に続く、正統なる『ジュラシック・パーク2』が誕生した。劇中の恐竜とは裏腹に、映画的進化の扉の前で地団駄を踏んでいたシリーズ自体も遂に道を探し出し、清々しいまでのブレイクスルーを果たした。(また定期で「遺伝子操作が〜」クレーマーたちが湧いているのは苦笑)
お見事です!!次回『ジュラシック・ワールド: 竜の惑星』乞うご期待!
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