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ジュラシック・ワールド 炎の王国のJIZEのレビュー・感想・評価

4.6
ジュラシック・ワールドが恐竜たちによって破壊された3年後を舞台に火山の大噴火に見舞われたヌブラル島からの恐竜と人間たちの脱出と恐竜の軍事利用を目論む陰謀を描いた新三部作のシリーズ第二弾‼初日に字幕で鑑賞。全編はゴシックホラーのような屋敷と恐竜を掛け合わせた重厚感があり善い意味でジュラシックシリーズらしくない異色編とも称せる中間の背骨に値する作品だった。また恐竜を捕獲し連れ帰る一幕や地形が人間が住む世界と地続きで配されてる点など極めて「ロストワールド」のDNAを意識させる感触だ。原題の「Fallen Kingdom」は直訳で"堕ちた王国"。すなわち人間たちが支配する"王国(地球)の破壊"を描いた作品である。作品の前半では噴火の影響で恐竜絶命を回避するために島全土からの脱出劇が前作「ジュラシックワールド」の世界観を牽引して地続きでその後が描かれ作品の後半では舞台を大豪邸に移し恐竜競売の是非をめぐって人間と恐竜との絶命か共存を改めて"責任"という視点から奮起させる。オーウェンとクレアの掛け合いも往年のスクリューポールコメディを醸すような面白味が前作より研磨されて盛り込まれていた。それこそ冒頭でインドミナスの白骨化した死骸をインジェン社の探査艇が海中で回収するくだりからいきなりT-REXとモササウルスが強烈な存在感を放つがまさにジュラシックシリーズそのものが開幕から終幕までで新時代へとフォルムを切り替えていくしみじみとした余韻を残しつつも確実に前進し続ける重大な続編である。またジョン・ウィリアムズのあの名曲が(大々的には)1箇所しかかからないのも革命的にパラダイムシフトする内容の意図を汲み取れば理解できた。

→作品概要。
監督は「インポッシブル」のJ・A・バヨナ。本作はシリーズ累計5作目で新三部作完結の第二弾にあたる。主演は前作「ジュラシック・ワールド」に引き続きクリス・プラットとブライス・ダラス・ハワードが同役でそのまま続投。また本作は「ジュラシックパーク」で初登場を果たしたジェフ・ゴールドブラム演じるイアン・マルコム博士が本作でカムバックした事を受けファンの間からは多大な賞賛が巻き起こりました。

→J・A・バヨナが引き継いだその先の異世界。
後半の北カリフォルニアにある豪邸に舞台を移してからのほぼ密室内のくだりが異感触であり作品内の世界観が際立っていたように感じる。特に終盤,強敵インドラプトルを相手にメイジーが悲惨な形相で悲鳴をあげ邸宅内を逃げ回る様は諸に恐怖ホラー映画の感触が強かった。おもに監督J・A・バヨナの持ち味であろうゴシックホラー的で重低音な暗い異色の雰囲気がジュラシックシリーズの王道を走るアドベンチャーの基盤に組み込まれた事で異彩を放ち出している。また同様に後半でかつてはパークの根源を築いた建設者ジョン・ハモンドの古びた肖像画が虚しくデフォルメされるが彼が全盛期に望んだ夢と挫折が繰り返し失敗から何一つ学習できないエゴであり悪い大人たちの手で未だに誤ったカタチで受け継がれてるのなんかも全シリーズを通じて熱く訴えかける演出がされていた。

→総評(未知の脅威となる新時代の幕開け)。
鑑賞後は単純にスゴい映画を観たなあ...というやや放心状態に陥りながらも作品が示す方向性やトーンの深刻さに対して整理が追い付かなかったが何日か経つとジュラシックシリーズが作品内のメインテーマとして当初から掲げる"共存か絶命か"という最大の問いに今回の炎の王国では明確な解答を打ち込んだという点でシリーズ史上類を見ないカルト的な濃度がある作品であったように感じました。終盤のある場面でオーウェンがクレアに対して「それを押せば世界が終わるぞ...」という超重大な台詞の連なりとかも事の深刻さや緊迫感なり観ていて鳥肌がたった。また敵役となる前作のジュラシックワールド事件を引き起こした首謀者ヘンリー・ウー博士やトビージョーンズが演じた競売の司会役エヴァーソルなどヴィラン側の動向も前作より手の内が時間を割いて描かれていたので俺的にはかなり満足でした。イスラ・ヌブラル島が火山噴火によって消え去り柵のある世界から飛び出した恐竜たちが生きる世界は...軽い娯楽から重いシリアスへ2021年に再び秀才コリン・トレボロウが監督にカムバックして転じる新たな新三部作の完結編をぜひ楽しみにジュラシックワールドユニバースの映画史に残る新境地を待ち望みたい。
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