茶一郎

ジュラシック・ワールド 炎の王国の茶一郎のレビュー・感想・評価

4.0
 『〜炎の王国』などという副題が吹き飛ぶほどに、臨界点を超えに超える『ジュラシック・パーク』リブート作二作目『ジュラシック・ワールド 堕ちた王国(原題:Fallen Kingdom)』。この「王国」というダブルミーニングに鑑賞後、震え上がります。

 前作『ジュラシック・ワールド』でまたしても恐竜のコントロールに失敗した、歴史から学ばない人類。本作は、崩壊したジュラシック・ワールド(島)から恐竜を助ける『ロスト・ワールド・/ジュラシック・パーク』の恐竜版的な救出劇が前半、そして後半は監督J・A・バヨナの出世作『永遠のこどもたち』さながら古典的な幽霊屋敷モノのホラーに変貌していきます。特に後半の、前作『ジュラシック・ワールド』からのスケールダウンは賛否が分かれる所ではないかと思います。

 J・A・バヨナ監督は、上述のホラー(超感動的!)『永遠のこどもたち』、スマトラ沖地震における津波被害を最新のVFXで表現した『インポッシブル』、また孤独な子どもと「怪物」との関係性を繊細に描いた『怪物はささやく』で非常に高い評価を得てきました。本作『〜炎の王国』における幽霊屋敷モノのホラー、火山噴火被害、恐竜(怪物)への孤独な少女の視点、これらは過去のJ・A・バヨナ監督作品の良い所取りで、驚く事にこの『〜炎の王国』は、「J・A・バヨナ監督作」と言うべき作家性に満ちた作品に仕上がっています。

 今回の合成恐竜インドラプトルの長い爪の大きな影……監督も『吸血鬼ノスフェラトゥ』を参考にしたという古典的な幽霊屋敷モノへの転換、さらに賛否を呼ぶのはラストの展開、『ジュラシック・パーク』シリーズの名言「生命は必ず道を見つける」を突き詰めた極地を見せます。
 どこまでがその「生命」を指すのか。この最後の展開は、『エクス・マキナ』、『アナイアレイション -全滅領域-』、何よりも本作の原作者マイケル・クライトンの別の映像化作品『ウエストワールド』同様の非常に今日的なテーマをこれから『ジュラシック・ワールド』シリーズも突き進む声明であり、この展開を私は非常に賛同します。

 『ジュラシック・ワールド 炎の王国』の次回作こそ本番、「堕ちた王国」での恐竜大戦が待っている事と思います。ただただ期待します。
茶一郎

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