ま2だ

ジュラシック・ワールド 炎の王国のま2だのレビュー・感想・評価

3.3
ジュラシックワールド 炎の王国、観賞。

シリーズに対する危機意識や愛ゆえにブレイクスルーを模索する気持ちはよくわかる。が、雑でほんとにびっくりした。

SWエピソード8でも感じたが、伝統やルールを逸脱するときほど、思い切りと同じくらい慎重さや丁寧さが必要になることを痛感させられる。ただ乱暴ながらシリーズを隘路から救う跳躍があり、そこは買いたい。

恐竜をほぼファンタジーの怪物として描いている本作は、好意的に取るとバヨナ監督の持ち味と言えるが、リアリティを傍に置いた設定はかなり平坦かつ中途半端なもので、前作からのCG技術の進歩を帳消しにしている。

恐竜に安易に感情表現をさせ、ドラマを生み出そうとしている場面が多く、表現としては10年分くらい後退した印象、このまま行くと次作ではケイト・ブランシェットが声をあてているかもしれないファンタスティックビースト感があった。ここでは、楽しみにしていた恐竜との心の交流の大安売りが行われており、学術的なスタート地点を持つシリーズのアドバンテージを捨ててしまっている。

また、2つの「ワールド」をつなぐ中盤以降の舞台での展開がかなり悲惨で、このパートの上映時間に対する分量の多さも何か事情があるのではないか、と同情してしまうくらい困惑させられた。ATM以下のセキュリティの研究所とか、さすがに真面目に観る気を失わされる。

そもそもシリーズに人間を描くこと自体期待していないが、21世紀の作品とは思えない座組みで繰り広げられるドタバタは、人間たちの倫理を問いたかったのかもしれないが、もっと丁寧にやるか、バッサリ切るべきだったと思わされる内容とクオリティ。あの少女が自らの境遇を腹落ちさせ、あの決め台詞を自発的に語る時間も資質も成熟もない。

バヨナ監督らしいリリシズム溢れるシーンも散見されるがそこに至るまでの説得力に欠けすぎていて、やりたいことはわかりますけどレベルにとどまっている。

屋敷でのくだりは最小限にとどめて、もっと火山島で粘ってから一気に風呂敷を広げてみせるエンディングにつなげるべきだったのでは、と強く感じる。

ただ、この禁じ手的な風呂敷はよくも悪くも広げられてしまったわけで、その意味では隘路にはまっていたシリーズを違う地平に連れ出した今作は、リブート第2作目の役目をしっかり果たしたと言えるのかもしれない。

劇中で開かれた扉のその先、正直なところ次作でどうするつもりなのか、とても楽しみ。万里の長城でバイオハザードかな。マット・デイモンが出てきそうだ。新シリーズの生みの親、SWエピソード9を降板させられたコリン・トレヴォロウがどう着地させるか期待したい。

クリス・プラットとプライス・ダラス・ハワードを中心としたメイン周りのアンサンブルが新キャラ含めて魅力的なのは本作の美徳のひとつ。彼らを中心に観れば、もうひと声楽しめる作品に仕上がっているとも思う。

ドルビーアトモス環境で観賞したが、音響的な興奮は薄かったので、これから観るならば4DXをおすすめしたい。
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