しの

ジュラシック・ワールド 炎の王国のしののレビュー・感想・評価

3.7
映画としては非常に面白いと思う。キメ画は多いしシチュエーションも最大限に利用してる。新世代の続編として思い切った展開も支持したい。一方で、サスペンスを特盛にしすぎてかえって冗長に感じたり、何より恐竜が「動かされてる」ように感じてしまった部分もある。複雑。

繰り返すが、エンタメ映画としては非常に面白い。が、そのサービス精神が矛盾を引き起こしている感じがしてしまう。要は、インドラプトルをはじめとする恐竜は「人間が制御できないもの」であるはずなのに、やけによく出来たサスペンス展開に合わせて動くので、逆に都合よく動いてる感がしてしまうのだ。一言でいえば、あざとい。

例えば(これは予告映像にあるので触れるが)インドラプトルが子供部屋に侵入する場面。ひっそりと近づき、子供に触れるか触れないかのギリギリまで手を伸ばす所なんて、画自体は「これがやりたかったんだな」と思えるほどキマってるのに、その一方で、やけに恐竜の行儀がいいなとも感じてしまう。こういう背反した感情を抱く場面が多かった。

Tレックスも今回は「動かされてる」感の方が強かった。やっぱりあれはここぞというときに突如現れてこそだと思う。前作は「ここぞ」感と、出てくるロジック(歯の数)がしっかりしてたのでまだ良かったが、今回はちょっと都合の良さが目立つ。お得意の咆哮もなんだか形式張った感じ。

サスペンス演出自体も手放しで評価できない。もちろん、色んなシチュエーションで楽しませてくれるから飽きずに楽しめるのだが、「ギリギリセーフ!」とか「無事だと思って安心したら…」とか、同じことをやりすぎて逆に緊張感が削がれる感じもあった。矢継ぎ早なので余計に。

このシリーズはもともと前作からテイストを変えていて、恐竜に対する絶対的な畏怖やリスペクトのあった初代に対し、『〜ワールド』からは怪獣・モンスター映画色を強めてエンタメ性に振っている感じがある。本作ではそれがいよいよ限界点に来たという感じ。

「力を持ちすぎた人間の傲慢さが自らを破滅に導く」というのは初代から通底する思想だが、『〜ワールド』以降エンタメ振り路線を突き進み、恐竜をサスペンスやスリラー、異種交感ものの「ための」キャラクターにしていった本作自体が、皮肉にもその思想を体現しているように思える。

もちろん、これは現時点での感想であって、最終的な評価は次作で決まる。なぜなら、本作ラストの展開がまさにその「傲慢さ」から彼らを解放するものだからだ。となれば、シリーズ自体の恐竜への向き合い方もここで変わってくるかもしれない。というわけで、ひたすら最終章のハードルを高めた一作だった。頼むぞ!
しの

しの