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横須賀男狩り 少女・悦楽のnetfilmsのレビュー・感想・評価

横須賀男狩り 少女・悦楽(1977年製作の映画)
4.0
 神奈川県横須賀、一晩中廻り続けるロックのレコード、きっこ(大野かおり)とミコ(中川ジュン)は床に座りながら、その猥雑なグルーヴに耳を傾けていた。近くでパトカーのサイレンが鳴り、きっこはそろそろ家に帰る頃だと話すが、親友のミコに「泊まっていけば?」と呼び止められる。だが心底不良ではないきっこはとりあえずお姉さん(折口亜矢)に電話すると言って聞かない。その頃、夫の光夫(矢崎滋)と妻の八重子の元に、ストッキングを被った大柄な男が突如部屋に侵入する。左手に拳銃を握り締め、右手には出刃包丁、夫の光夫を縛り上げられた挙句、なすすべなく後ずさりした八重子に男は突然襲いかかる。最初は金目のもの欲しさに侵入した強姦は八重子の美しさにやられ、力で女をねじ伏せる。その男の右の手首には赤い痣があった。絶望の中で行為は続き、光夫は屈辱になすすべもない。きっこからの電話に夫婦は何もすることがないまま、時間だけが過ぎる。痺れを切らして帰宅した彼女の前で、取り繕うような夫婦の素振り、妹は夫婦喧嘩でもしたものかと考えていた。翌朝、偶然波止場で夫の光夫を発見した2人は学校には行かず、彼の後をつけるとその姿はピンク映画館に吸い込まれた。親友同士の2人は、ミコの母親の元カレであるスーパーリアリズムの画家ミッキー徳田(蟹江敬三)に会いに行く。

 青春群像劇を得意とした藤田敏八の物語は、思春期の2人に思いもかけない試練をもたらす。徹底して純潔を守り通すきっこに対し、ミコは酔って昏睡状態になった隙をジニー・カトー(トニー和田)に付け狙われる。佳枝(絵沢萠子)が営むディスコの店内、黒人青年と踊ったミコは自らの運命を男に委ねたようにも見える。一方で生娘のきっこは聖女として起立し、性を奪われたミコや八重子とは対比的に描かれている。ただその転落の過程は『修羅雪姫』シリーズの鹿島雪(梶芽衣子)を真っ先に想起させる。義理の兄への失望と同時に浮かび上がるミッキー徳田への憧れ。最初から両親不在の物語は、ミッキー徳田にでしい入りするはずだった主人公の運命を変えてしまう。佳枝が運営する「DISCO Q」の店内、下手な化粧で自らの歳を覆い隠した少女の前に、1ヶ月ぶりに鬼畜が再び顔を出す。タンスの上から落ち、バラバラになった陶器と弥次郎兵衛、無造作に脱ぎ捨てられた赤いパンツ、ウィスキーのダブルと少女たちを攫う鬼畜との道行き、5人の金髪女と乱行中の様子をミッキー徳田に描かせた鬼畜の病巣は、無防備な2人の少女に突然襲いかかる。優しさと残酷さとを同時に併せ持った思春期の少女の憧れと挫折は燃え盛る炎と夕陽に包まれる。図らずもいつの間にか少女は、大人たちの苦々しい欲望の中に放り込まれ、通過儀礼のような危うさの只中を揺蕩う。
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