MasaichiYaguchi

ダンガル きっと、つよくなるのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

4.3
「友情・努力・勝利」というジャンプ三原則があるが、女子レスリングを題材に父娘の熱い絆が描かれる本作の場合は「愛情・努力・勝利」になると思う。
自分が果たせなかった夢を子供に託す親は何処でもいつの時代にもいると思うが、この作品の主人公マハヴィルは才能を見出した長女と次女にそれを課していく。
彼は「巨人の星」の星一徹ばりに娘たちを厳しく鍛えていくのだが、遊びたい盛り、お洒落したい盛りの女の子にとって、親の野望やエゴに振り回されるばかりで迷惑以外の何物でもない。
だが、ある切っ掛けで彼女らは猛特訓の裏にある父の真意や愛情に気付いていく。
この映画は女子レスリングのスポ根物であるが、それだけの作品ではない。
インドにおいて女性の地位は低くて社会進出もままならない中、主人公の娘たち、ギータとパピータはレスリングの世界だけとはいえ、男たちと対等に、いやそれ以上に渡り合っていく。
タイトル「ダンガル」には「レスリング」だけでなく、「ファイター、挑戦」という意味がある。
女の子は将来、家庭を円滑に営むのに必要な家事を身に付け、結婚して出産、そして育児することが幸せで全てという凝り固まった考えや偏見に対し、そして父娘の前に立ちはだかる様々な障害、そういったものにファイターである彼らは諦めず、創意工夫して挑んでいく。
女子レスリングの映画なので試合シーンが数々出てくるが、テレビでオリンピック中継をそれなりに観ていたので知っている気でいたが、本作で初めてレスリングのポイントを含めたルールについて理解した。
登場する試合シーンを観ていると思わず手に力が入ってしまうが、特にラストの試合は胸アツになって声援を送りたくなる。
様々な葛藤や挫折を経ながら、夢に向かって諦めずに歩む父娘の物語は溢れんばかりの愛に彩られていて、観ている我々もその温もりに包まれてしまいます。