ardant

恋妻家宮本のardantのレビュー・感想・評価

恋妻家宮本(2017年製作の映画)
3.5
深夜、事件で慌ただしい名古屋の警察署に、刑事、森山未來が着任の挨拶に向かう。そこには曲者の刑事、武田鉄矢がいた(『リミット-刑事の現場2-』、2009、NHK)。

髪をひっつめ、全身黒尽くめの服装で、不穏な雰囲気を漂わせ、小学校の教室に向かう教師、天海祐希(『女王の教室』、2005、日本テレビ)。

他にも、『家政婦のミタ』(2011、日本テレビ)、『過保護のカホコ』(2017、日本テレビ)など、TVドラマで圧倒的なオリジナル脚本力を見せる遊川和彦。彼が、メガホンを取ったこの作品は、脚本家が監督をやるとどうしようもなくなるという過去の轍を踏まず、遜色ない仕上がりになっているし、そこらへんの高尚臭いがつまらない邦画と比べても面白いことは断言できる。

だが、私には、この作品が、彼のオリジナルでなく、重松清の『ファミレス』を原作にしていることが残念でならないのだ。といって、原作を読んだわけでもなく、おそらく、遊川和彦のことだから、モチーフだけを借りただけなのかもしれないが。彼ならば、完璧なオリジナルで勝負してもらいたかったし、それだけの力を持っていると思うからだ。

それにしても、最近の邦画とTVドラマを比較すると、生粋の映画人は何をやっているのだろうと思ってしまう。面白い作品に出会う頻度が全然違うのだから。
ardant

ardant