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ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出のmaverickのレビュー・感想・評価

4.2
2015年のイギリス映画。英国女王エリザベス2世の若かりし頃を描いたラブストーリー。


第二次世界大戦勝利の夜、お忍びで国民と共にそれを祝ったエリザベス王女と妹マーガレット王女。その実際の話に基づいたフィクションであり、大胆な解釈が面白い。実はこんなロマンチックな話があったのかもしれないねと。自国の女王をこんな風にフィクションを交えて描くユーモアさがイギリスらしいし、それに対して寛容的(むしろ楽しんでそう)な女王のお人柄を想像して微笑ましくなる。

エリザベス王女を演じたサラ・ガドンは、知的さとチャーミングさが合わさった演技で好印象。ひと目で分かる高貴な佇まい、そして数々のお茶目な逸話を持つ人柄が本作からも伝わる。妹のマーガレット王女は奔放な性格に描かれており、こちらも実際の彼女を反映した設定となっている。晩年になってもゴシップ紙を賑わせた彼女だが、むしろこうして見れば好奇心旺盛な愛らしい女性だったのだなと思える。籠の中の鳥であった二人は、こんな風に自由を謳歌したかったのかも。

マーガレット王女のキャラクターも相まって全体的にコミカルさがある。くすくす笑いながら楽しく観れる作品。ただ全体的に見ると、ラブコメディというよりは人間ドラマのイメージ。一夜の出来事を通し、エリザベス王女が成長する話になっている。ぐだぐだしているシーンも多いんだけど、締めるところはきっちりと締める。そういう部分が作品の好印象に繋がっている。フィクションなんだけど、王女はこういう出来事を通して成長なさったんだろうなと思えた。フィクションであっても敬いの心は忘れない。そうした愛国心がとても素敵だ。

国王ジョージ6世が吃音に苦戦しながらスピーチの練習をする場面があり、『英国王のスピーチ』を思い出した。エリザベス女王や、マーガレット王女の人柄も含め、英国王室のことを色々と知っているとより楽しめる。実際の話に基づいた、よく出来たフィクションドラマという印象。案外この話も実はフィクションじゃなかったり、なんてね。



2022年9月8日に崩御されたエリザベス女王。自国の国民のみならず多くの国の人から慕われた方だった。なぜ多くの人に愛された存在だったのか。それが分かるような物語だ。
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