Matilda

ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出のMatildaのレビュー・感想・評価

4.1
エリザベス女王が王女時代に一夜だけ非公式に外出を許されたという史実をもとにした作品。英国王のスピーチの6年後、ローマの休日の8年前ということでそれらとの繋がりも気になるところですが、今作、とても良かったです。

プリンセスが「一瞬だけでも普通の女の子になりたい」と願うといった内容はよくあるものかもしれませんが、今作はそういった内容の作品の中でもひと味違った印象がありました。※これ以降ネタバレあります。

リリベット、後のエリザベス女王は、これが最初で最後の外出だと知っていました。そしてこの外出はよくある家出のようなものではなく、ちゃんと両親を説得した上のものでした。そして最初にこの外出を望んでいたのはリリベットよりも妹マーガレットだったということも注目すべき点ではないかと思います。

後半でリリベットは言います。「妹がはぐれたりしなければ、私はこんなに素敵な一夜を過ごすことはできなかった。」マーガレットは王族としても一人の女性としても、純粋すぎますし危なっかしい。リリベットはずっと彼女に迷惑をかけ続けられているといっても過言ではないでしょう。
その妹の自由奔放な姿を見て、彼女は羨ましいと思っていたのだと思います。自分もそうなれたら、と。姉として次期女王として、彼女は自分のことも周りのことも自分自身でやらなくてはなりませんでした。19歳の彼女にとってその責任はあまりにも重い。
そんな彼女が一晩だけでも自由を謳歌できたのはマーガレットのおかげなのだと、彼女はそう思うのです。妹の自由奔放さが姉を自由の世界へと飛び出させたのだと。

そしてそんな彼女が迷惑をかけていい人物、それでもそばにいてくれる人物が、街中で偶然出会う空軍の"脱走兵"ジャックだったわけです。この2人はある意味似た者同士でした。だから惹かれ合うのでしょうが、心の奥底では、自分たちには戻るべき場所があることを分かっているのです。車の中で夢物語を語り合うシーンは泣けます。「みんな夢物語だ。」「そうよね。」そして2人は別れるためにバッキンガム宮殿に向かうのですから。
この2人のやりとりはとにかくキュンとしてしまいます。観ている観客全員が「2人で逃げればいいのに!」と正直思うと思います(笑)

自由を謳歌するために外の世界へ飛び出し、自分の無力さ、無知さを痛感し、そして次期女王としての自覚、覚悟を持つようになるその彼女の姿は尊敬に値します。彼女はとても強い女性だと思います。

プリンセスの夢のような一夜をとってもキュートでコミカルに描きながらも、どこか切なさを秘めた今作。予想以上の良作でした。
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