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イノセント15のmazdaのレビュー・感想・評価

イノセント15(2015年製作の映画)
3.8
あらゆることを自分で選択したいという意思と、結局一人ではなにもできないという現実が絶妙に共存した15歳を描く。

心の苦しさを、「なんか、痛い」とのどを触って表現するなるみの言葉は観ている私たちが感じさせられている苦しさの代弁でもあると思った。観ていてあまりにも息苦しいのだが、同時にとても美しさを感じた。別に痛々しいものが好きとかではなく、彼等の不器用ながらに模索してどうにか前に進もうとするその姿に人間らしさと人の美しさを感じる。こういう映画をみるといつも大好きな『ダンサーインザダーク』を思い出す。あの映画で感じた感覚にとても近かった。だから無性に惹かれる。

人と付き合うってすごくめんどくさい。家族も友達も恋人も。できれば何も誰も知らない遠くへ行きたくなる感覚。今の環境を解決するのではなく、遮断して目の中にいれたくないっていう感覚。
成長していくうえで徐々に気づく人生の上で必ず現れるめんどくささを知りはじめた15歳。そして疑問が生まれるけれどそれを簡単に解決して向き合うほどまだ成長できていない15歳。
大切な人が困っていてどうにかしてあげたいと思っても、具体的になにか事態を変えられるやり方を知ってるわけでもなく、ただただどうにかしたいというきもちだけが強くなる。大切な人がなんで大切なのかもよくわからないほど感覚的な愛おしさ。だけど愛おしいのは本当なんだろう。そうして自分の無力さに苦しくなる。子供にも大人にもなりたくなくて15歳というど真ん中に立たされているかのように。

のどをやわらかい手でしめられるような不思議な苦しさ。それは物語から感じたというよりはあきらかな純粋さを放ちながらとても冷たい目をもつ彼等から感じたものだった。幼児や小学生のまったくにごりのないクリアな感じとは違う、くすんだ透明感をもってる、15歳特有のものだった。でもこの瞬間のこの感覚は間違いなく二度と手にすることのできない財産だと思う。なにもかも嫌になりながら、どうにか乗り越えて、またこの先も何かになんどもつまずく。それを恐る恐る知ろうとしはじめてる、人生のある一瞬を映画にした感じだった。このつきまとうめんどくささと自分の前に何度もそびえ立つ壁こそ人生の醍醐味だと気づく瞬間が彼等に訪れてほしいと願った。よくわからない今この瞬間の行動はいつか必ずためになるはずだよと教えたくなった。多くの人がこの「わからない」という感覚を抱いて成長したと思うから。

最後のなかなかエンジンのかからないバイクは、まさになかなか進めない彼等を表しているんだと思って、なんとかやっとエンジンのかかったバイク音をきいてなんとなくほっとする。
イヤフォンで聞いていたせいもあるかもしれないけど音の使い方が印象的だった。ダンサーインザダークの初鑑賞もイヤフォンだったのだけど、音が与えるインパクトがすごく、身体の中に音が入っていくようなリアルな感覚、これは映画館では味わえない良さだと思う。iPhoneで観たというのもこの作品にとても合ってる感じがした。
主演のなるみを演じている小川早良ちゃんという子がとても良い。良い意味で、女優さんという自分からの距離を感じさせるような雰囲気がまったくないおかげで、近さを感じさせるようなリアルな空気感をもった子だと思った。かわいい。
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