家の近所に時々見かける二羽の鳩がいる。
彼らはたいてい同じ場所にいる。（違う場所にいるときは、私に見分けがつかないだけのだろう。）一羽が飛び立つと、もう一羽も同じ方向へ飛んでゆく。鳩は離れてしまったらもう会えないのかもしれないなと私は思っていた。鳩とヒトはこの点は違うんだと、この映画を観るまでそう思い込んでいた。
本作は路上で暮らすブランカとギター弾きピーターの物語。ストリート・チルドレンたちは都会という森の中で、お金という木の実を奪い、素早く路地に消えていく。彼らもまた隠しておいた大切な木の実をあっという間に奪われてしまいもする。常に身一つで生き延びなけれなならない。
ブランカとピーターは互いを思いやり手と手をつなぐ。その手は放してはいけない手だった。愛する人から離れてはいけない。鳩もヒトも同じなのだ。でもブランカはまだそのことを知らない。
「ペーパームーン」を思い出すかもしれない。ブランカはテータム・オニールの演じたアディとは違って一緒に居たいという気持ちを悪態で示したりはしない。
ブランカとピーターにはセリフはいらなかった。
