アラサーちゃん

ブランカとギター弾きのアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

ブランカとギター弾き(2015年製作の映画)
3.0
観たくて観たくてたまらなかった映画。
#ほとり座 でやっとこさ鑑賞。

監督の長谷井宏紀さんという方は、元々ストリートチルドレンに関心があり、定期的に彼らにプレゼントを配りにいっていたとか、なんとか、そういういきさつからこういう映画を撮ることになったらしい(←かなり前に読んだキネマ旬報参考なので情報あやふや)
そしてどうもクストリッツァの元で学んだことがある方らしく、ポスターでレビューコメントの欄にもクストリッツァの文字が踊っているのがとても印象的。

どん底で生まれた少女が、『お母さんを買う』という目標にむけてお金を貯めるため、盲目のギター弾きピーター老人と生活を共にすることになる。はじめての街、出会う人々、ふたりの音楽に惹かれる人もいれば、目を光らせる人もいる。真っ暗闇から希望を見出したかに思えたが、彼らは再びどん底に沈み込むハメになり…

スラム街からはじまり、夢と感動に包まれるストーリー展開やポジションがはっきりできあがっているキャラクターなどは、どこかディズニーを彷彿とさせ、わかりやすい起承転結の物語。
こういう単純さは好き。90分以内というコンパクトさも高評価◎いいことがおきたり、悪いことが起きたり、絵本のように波をもってきてのラストはよき。

少女が主人公という点で子ども目線の物語かと思えば、手ブレやここから撮るの?!っていうアングルでのカメラワークなんか、ブランカ本人よりも、ブランカたちを覗き見しているような感覚で物語に引き込まれていく。
とはいえ監督さんが写真家さんなので、しゃれたアングルの映像が素晴らしく、カメラワークから読み取る物語の意図はあまりないように思える。
それにしてもあのラストカットはうまいよなーああいうのいくつかあるけど、あれはずるい。

クストリッツァらしさがあるのかと思えば、『鶏が飛ぶ』のあたりはそれらしくて微笑ましかった。

そして、作中に出てくるストリートチルドレンのセバスチャンとラウル。これがもうほんとに素晴らしくて拍手喝采。とくにセバスチャン。あんなに可愛いの。どうやらラウルはオーディションだったらしいけれどセバスチャンのほうは監督がたまたま見かけた子どもで即決したらしく、確かに彼にしか出せない光るものがあるなーと思いました。彼の存在がどうもディズニーらしさを醸し出してるんだと思う。

ただ、『お母さんはいくらで買えるの?』というかなりパンチの効いたいい導入でありながら、半分も行かないうちに『お母さんはいらない』って言っちゃう…
まあ、ストーリー展開的にいずれそうなるのに、なんだか、このおいしい設定が無駄死にしてしまっている気がしなくもない。