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ミッション:インポッシブル/フォールアウトのJIZEのレビュー・感想・評価

4.2
元MI6の暗躍者ソロモン・レーンをイーサン率いる諜報機関IMFチームが捕獲作戦で投獄させたその後を舞台に"シンジゲートの残党(神の使徒)"が陰謀を張り巡らせるその対峙を描いたシリーズ続編の第6弾‼まず冒頭でホメロス著の「オデュッセイア」が今回の任務を告げる伝言アイテムとして超クラシックかつアナログな手法で映し出される。つまりこの叙事詩から"個の苦渋の決断(葛藤)"にイーサンたちの道筋を被せたような着想が得られている。また今回の任務はシンプルに"盗まれたプルトニウム(核爆弾の燃料)の奪還"。前作の『ミッション:イン・ポッシブル/ローグ・ネイション(2015年)』で描けなかった側面(余波)をアクション特化型の構造で補完させたような代物であった。原題の「Fallout」は直訳で"放射性降下"だが同時に"余波"や"副産物"という意が含まれイーサン自身の起動力の根源にもう1つの比重が併せられている。簡潔に云えばメインの脚本より今年56歳のトムさんがスタントなしでやり遂げた命懸けの強行アクションの応酬に帰因が尽きた。おもに雷雲が立ち込める1万m上空を飛ぶ飛行機から飛び降り地面すれすれでパラシュートを開く"HALOジャンプ"や螺旋降下で垂直に地上付近を操縦する空中チェイスの神業など距骨骨折を真に受けずに危険度がアップする本作の増幅加減はある意味でシリーズのパート2を彷彿とさせるような挑戦意欲に溢れていた。作戦の不可能度という見方でもシリーズ最強だったようにも感じる。中盤でイーサン率いるチーム団結での知能戦を駆使して裏の裏をかいて敵を行動を瞬時に欺いた"スパイ大作戦"のような機転の一幕は前作のラストを連想させ個人的には一番のお気に入りシーンでした。

→総評(新ミッション発令でシリーズ最難関の壁)
天才クリストファー・マッカリー監督と名優トム・クルーズの相性の良さを今回でもまた痛感させられた。前作のアプローチが娯楽多めの陽なら本作は複雑な更に奥行きを膨らませた陰に徹した別のアプローチを宿した作品という手触り。おもに"敵陣の手元から3つの核爆弾を回収する"という単純明快なプロットではあるがイーサン率いる仲間たち特にベンジーの間が抜けたコミカル描写,ルーサーの熟練たる安定感,イルサの再登場やイーサンに関わる意外な同窓会組の登場まで往年の仲間たちによる掛け合いの面白味は均衡にまぶされどれもが前作より研磨された状態で演出されていた。ただ作品の不満を云えば終盤,イーサンが敵の2台ある内の片方のヘリを奪い搭乗して以降の常人離れするくだりが更に本格アクション映画に化けてしまうためながれが単調に思えてしまい前作の直前まで首謀者レーンから瀕死に追い込まれてからのトリッキーな山場を張る機転を考えればひねりがやや物足りない。また2時間弱と本作が長尺なのも脚本で方向性が散漫した感じがうかがえた。逆に一番面白かったくだりが中盤,安全な場所に居るベンジーが遠隔ナビでイーサンに走る方向をひたすら指示するシリーズらしい何とも言えない緩さが映像での緩急とも併さり非常に面白い。空中アクロバットでトムの足首が折れた製作段階のごたごたもありアクション重視でストーリーが練られたというおとなの事情を汲めばそれなりの視点で補えれた。次回の7作目でもトム・クルーズが同じ調子で演じ切りそうな期待を乗せ俳優人生で彼の新たな挑戦を待ちたいと思う。
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