けーはち

ミッション:インポッシブル/フォールアウトのけーはちのレビュー・感想・評価

4.8
今回は主人公イーサン・ハントその人をトム・クルーズ本人と重ねながら凄まじいアクションで語るようなMIの集大成とも言える作品。

56歳、スタローンやシュワのようには恵まれていない肉体にムチを打って鍛え上げ、高高度のヘイロー降下、暴走し火を噴くヘリでの追走劇、ビルの間を飛び移り(そしてたまに骨折し、それでも撮影のことばかり一日中考えて)、挙句の果てに断崖絶壁で格闘したり岩肌にぶらさがるなど死に物狂いなスタントを可能な限り自身でこなして、ありとあらゆる観客を楽しませることに命をかけるスーパー・スター、トム・クルーズ。

華麗な策もスパイらしい秘密道具もなく、ただ必死に敵を追いかけ食い下がり、ズタボロになりながら命をかけて仲間も世界も守りきってみせる、イーサン・ハントこそがトム本人のようであり、細かなディテールや物語を語る方がいっそ野暮にさえ思えてしまう。

消滅するテープや爆弾の配線をカットするくだりなど、昔なじみの演出も映えるが、あくまでもそれはスパイものとしての建前を作るうっすらとした味つけ。冷戦時代のスパイなんてとっくの昔にいない。紛争の火種は無限に世界中に広がり、途方もない悪がくすぶり続ける。映画の中でも、ほぼ孤立無援の彼に荒唐無稽なミッションが降ってくる。命を捧げて戦う自分を国は守ってくれない上に、そればかりか、度々疑いの目をかけてくる。それでも使命を果たし仲間を守り目前の人を守る。愚直な生き方を愚直にまっすぐ走る。生きる勇気をくれる。愚直で良いんだって言ってくれる。カッコイイッ。

相手役(?)ヘンリー・カヴィルもちょっと悪そうなヒゲで策士なのか天然なのか分からない変なクセになるテイストのキャラクターで何だかカワイイぞ。スタントマンのリャン・ヤン演じる、パリのトイレでトム・クルーズとヘンリー・カヴィルの2人を相手に大立ち回りをした謎の中国人(特に重要じゃないのに格闘では劇中最強)は大注目だ。