回想シーンでご飯3杯いける

つむぐものの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

つむぐもの(2016年製作の映画)
4.2
福井県で1人で和紙職人として働く老人と、そこにやってきた韓国人の現代っ子女性ヘルパーの交流を描いた作品。

当初は韓国人女性が和紙職人として修行する話だと思っていたけれど、韓国人の固定観念に囚われない発想をきっかけに、頑固だった老人が心を開いていく様子も同時に描いており、国境と世代を超えた心の絆が、押し付けがましくない優しいタッチで描かれている。

本作が挑戦的なのは、老人が脳腫瘍の後遺症で身体が不自由になってからの展開で、日本の介護事業に対する問題提議も含まれている。介護に携っている人がこれを見てどう感じるのかと思うと複雑な気持ちになってしまうけれど、そのメッセージを韓国人が発するというのもポイントで、日本人として考えさせられる内容だった。

主演は元芸人の石倉三郎と、「息もできない」で知られるキム・コッピ。2人のやりとりは正に魂のぶつかり合いといった感じで、言葉を超えた心の交流が静かな感動を呼ぶ。

本作は、近所のツタヤが準新作110円セールをやっていたので試しに借りてみた作品。公開時はかなり限定的な上映だったらしいけど、こんなに素晴らしい映画が見つかるから、冒険でマイナー作品を観るのは止められない。