horahuki

吸血鬼のhorahukiのレビュー・感想・評価

吸血鬼(1956年製作の映画)
4.1
某ゲームのおかげで知名度急上昇なエリザベートバートリーを題材にした吸血鬼映画です♫

リカルドフレーダ監督作とされていますが、実質的に本作を監督したのはイタリアホラー界の父である巨匠マリオバーヴァ。デビュー作『血ぬられた墓標』の前にも同じ吸血鬼テーマでこんな素晴らしい作品を撮っているのがすごい!

めちゃくちゃ面白かったんだけど、ヨーロッパ版のDVD(イタリア語音声、英語字幕)で鑑賞したので、もしかしたら読み間違えてるとこがあるかもしれません(笑)

あらすじ…
舞台はフランス。若い女の死体が相次いで発見され、それらの死体からは血が抜かれていた。犯人を追うジャーナリストの主人公ピエールは、死の間際に撮られた被害者の写真に、顔を不自然に隠している男を見つける。そいつを追っていくもなかなか尻尾を掴めない。痺れを切らした上司は主人公を担当から外し、やたらと主人公を誘ってくる美女の屋敷で行われる金持ちパーティの取材をするよう命令するが…。

他の方も書かれてますが、やはり凄いのは最初の犯行シーン。空間を広く使い次第に大きくなる影により犯人が忍び寄る様を表現。ジャーロのように顔を見せずに行われる犯行。そしてラストに犯人の顔に照明をあて、不気味かつ幻想的に犯人の顔を観客に印象付ける。

そして『血ぬられた墓標』でも見られた映像トリックが本作でも使われています。カットを割らずに綺麗な若い顔から醜く皺だらけな老いた顔へと変貌させる。しかも暗闇でも何でもなく明るい画面で顔をアップで捉えながらです。マジでどうやってんのかわかんない…。バーヴァマジック炸裂です!

世界初のジャーロは同じくバーヴァの『知りすぎた少女』と言われていますが、本作でもう既にジャーロの片鱗が見え隠れ。本作がホラー映画史的にどういった扱いを受けているかは知りませんが、厳密には違えど本作を初のジャーロと挙げる向きがもしかしたらあるのでは?

それでもジャーロを思わせるのは前半のみで、後半はゴシックホラーへと姿を変える。そして、ゴシックでありながらもモダンホラーな要素を合わせ持つのも面白い。

空間を大きく使った古城や墓地等の映像、城内の通路や階段等を行き来する人々。モノクロ映像ならではの映像的美しさが感じられるのはやはりマリオバーヴァの力量だと思います。

吸血鬼を変わった切り口で見せる映画は数ありますが、本作もかなり変化球な吸血鬼映画。実際にドラキュラのようなわかりやすい化物(もちろんカーチャも笑)は出てこないのですが、本作の犯人を評するには吸血鬼という言葉が最も似合う。美しくも残忍。そしておぞましい。血を、人を貪り、美しさの糧にする。

本作はイタリア初の「本格的」ホラー映画であり、その製作は非常に難しい状態であったにもかかわらず、フレーダがギャンブル仲間のプロデューサーに掛け合ったお陰で実現したもの。途中降板したフレーダの尻拭い的に監督を引き受けたバーヴァ(もともとは本作の撮影監督)の功績がメインで語られてるような気がしますが、バーヴァだけでは本作の製作は不可能であり、フレーダの功績もとてつもないわけです。この2人がタッグを組んで動いたからこそイタリアにホラー映画が生まれたと思うと本当に凄い。偉人ですね!

久々に英語字幕で映画見ましたが疲れますねー(^_^;)来月には『シェラ・デ・コブレの幽霊』も届くし先が思いやられます…。英語力があればな〜

あと本作関係ないですが、『マンディ』の日本公開が決まりましたね!楽しみです(*^^*)
それにしても今年の下半期ホラーヤバイですね!リベンジ、ゴーストストーリーズ、アルカディア、クワイエットプレイス、ヴェノム、マンディ、イットカムズアットナイト、ヘレディタリー。今年もホラー豊作年になりそう♫
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