かめの

ランジュ氏の犯罪のかめののレビュー・感想・評価

ランジュ氏の犯罪(1936年製作の映画)
4.2

これが1936年制作なのかと思うと、ルノワールの手腕に改めて驚かされる。まず、誰かが殺され、ランジュ氏が犯人であると初めから分かっており、その真実が回想されるという導入部分から既に物語へ引き込まれる。

特にランジュ氏が殺人を行うシークエンスが素晴らしかった。カメラは窓の外、ピストルを片手に部屋を飛び出す彼を追い、階段を降りた姿を確認するやいなや、ぐるりとパンさせ、ランジュ氏たちを捉える。彼は引き金を引く。

その時、彼は大げさに怯えたり、怒りに震えたりもしていない。無表情のまま、隣にいる彼女に「死んだ?簡単だね」と告げるだけだ。殺人とはそういうものかもしれない。

しかし、ランジュ氏の犯罪はやはり犯罪で、正当化されることはない。正当防衛でもなく、ただ自分の手に入れた全てを壊されたくない一心で殺しただけだ。

ラスト、浜辺を歩き、後ろ姿しか見せない彼らはどこにいくのだろう。
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