腐敗と策略と裏金が跋扈する、裏社会の泥沼模様を苛烈に描き切ったサスペンス。冒頭三十分で手酷くえぐい暴力におぞましい性接待が描かれ、権力を持った男たちの醜悪さをこれでもかと叩きつけられる。嫌悪感すら抱かせるその権力者たちは、権力があるがゆえに立ち回りだけは図太く巧くて一筋縄ではいかない。
彼らに立ち向かうのは権力者に裏切られ落ちぶれたヤクザ者と、出世街道を踏み外しかけている検事。彼らが、それぞれ、やがて手を組んで、この巨悪に立ち向かっていく。この彼らもクリーンで善良な人々ではなく、彼らそれぞれで憎悪を抱え打算を持っている。けれど、正義なんて紙切れ以下のこの腐った社会で息をするには、いったんそこで呼吸するしかないのだろう。その緊張感が、最後まで息をつかせない展開となり全編を楽しませてくれた。
最後の二人のやり取りがとりわけ良い。ひっどいドロドロとした世界をひたすら見せられたあとの、気の抜けた他愛ないやり取り。空約束でもあったとしても、打算も嘘もないやり取りは、ただひたすらに、爽快だった。