せーじ

日本で一番悪い奴らのせーじのレビュー・感想・評価

日本で一番悪い奴ら(2016年製作の映画)
4.1
「はい、こんちわ~」

104本目。Netflixでザッピングしていたところ、見つけた作品。
結構面白いという声を聞いていたので、この機会に鑑賞。
その通り、なかなか面白かったです。

学生時代は柔道しかやってこなかったような一人の若造だった男が、刑事となり「点数を上げる」為に裏の社会に足を踏み入れ、違法捜査でのし上がることで徐々にワルになっていく様子が嫌らしく、俗悪に描かれていく。主人公の純粋さ(悪く言えばおバカさ)で、捜査の手段と目的とが簡単に入れ替わってしまい、それがどんどん暴走し続けるので、一周回って笑えるだけではなくしっかりと興味の持続が保たれているのがいい。
また、女性の身体を使ったエロ演出も、濡れ場だけではなく、ちょっとしたシーンでのお尻のアップとか、署内で主人公といちゃいちゃしていた女性警察官がポスターのモデルになっていたり…とか、そういう猥雑というか嫌らしい演出がちょいちょい放り込まれているところが、作品全体が殺伐となり過ぎない語り口に繋がっているように感じた。個人的に一番面白かったのは、主人公の舎弟である彼の結婚式のくだりで、警察関係者(しかも上司)を呼んでどんちゃんやってるところ。あれはみんな楽しそうだったなぁ…

けれども、そんな無軌道なやり方でうまくいき続けるはずもなく。
終盤に向かって主な登場人物は、ほぼ全員破滅の道を歩んでしまうわけだけれども、現実がつきつけられるそのシビアさや、そして例によって上は誰も責任を取らないで終わるという無常さが、それまでのどんちゃん騒ぎとの対比にしっかりなっていて、作品全体をきちんと締めているようにできている。その果てに「こいつは何のためにこんな事をしていたんだ…?」という空洞が、エンディングで映される日の丸の赤のようにぽっかりと空いたところで物語が終わる…というのも、うまい幕引きだったのではないだろうか。
主人公を演じられた綾野剛さんはもちろん、全体的に役者さんたちは好演されていたと思います。(個人的に一番好きだったのは、情報屋の一人である老婆。すごいなと思いましたw)ちょっと残念だったのは、時代描写が若干雑だったこと。昔の繁華街の映像なのに東横インが写ってしまっていたり、70年代の場面なのに、署内の110番受信機器にデジタル表示をしているものがあったりと、そこはもう少し工夫してほしかったです。

とはいえ、実録警察犯罪モノとしては「やだ~サイアク~」とか言いながら、軽い感覚で入り込むことができ、最後にしっかりと自分自身の正義観や倫理観の点検がうながされ、考えさせられる作品になっていると思います。
やっぱり悪いことは、ダメですね。
せーじ

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