半兵衛

ガキ帝国の半兵衛のレビュー・感想・評価

ガキ帝国(1981年製作の映画)
3.6
喧嘩を他の娯楽映画のようにアクションにせず、喧嘩にのめり込む人間の楽しさとアホらしさ、その裏にある痛みを容赦なく描くところや在日への視点など井筒和幸監督の姿勢はこの時からぶれていなかった。あと喧嘩する人間と周囲の喧嘩を煽ったり、喧嘩するのがちょっと嫌な奴もいたりする様子をリアルに描ける作家は彼ぐらいしかいないのでは、大抵は娯楽のセオリーにしたがってみんなヤル気満々にしているから。出演者の大半が素人なので、喧嘩シーンはぎこちないけれどそれがかえってリアルな感覚を映画に与えている。

島田紳助・竜助コンビの演技は正直つたないけれど、喋りのうまさとキャラクターがイキってる不良少年にハマっている。そして喧嘩に明け暮れる最中に見せる優しさやユーモアが親しみを感じさせるだけに、ラストの悲劇が際立つ。彼らの上に上岡龍太郎のやくざがいて、所詮彼の駒としての存在でしかないところもよく出来ている。

そして男気があって、最後まで冷静に自分の意思を貫く趙方豪の格好良さ。ラストに彼がしでかす行動は正直蛇足だと思うけれども、森崎東のような「生きる」ことへのメッセージが溢れていて嫌いにはなれない。
半兵衛

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