えんさん

BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアントのえんさんのレビュー・感想・評価

3.0
字幕版にて。

児童養護施設で暮らすソフィーは、ある夜遅く、町を行き交う巨大な大男と目が合う。驚き、ベットに駆け込むソフィーだが、その大男はソフィーを摘んで連れ出し、巨人たちの国へ連れ去ってしまう。巨人の異様さに最初は逃げ出す一心だったソフィーだが、彼の心優しさに不思議と心を開いていく。そんな彼女を待っていたのは、巨人の国での、思いがけない大冒険だった。。『チャーリーとチョコレート工場』の作者ロアルド・ダールによる児童小説『オ・ヤサシ巨人BFG』を、スティーブン・スピルバーグ監督が映画化した作品。

「ブリッジ・オブ・スパイ」に続く、今年2回目となるスピルバーグ作品の鑑賞。「ブリッジ〜」の感想文にも書きましたが、数年前だったら、スピルバーグ作品といえば夏休みや年末などのいわゆる大作系映画の中での公開になり、平日のオープニングとなれば、会社や学校での諸々を早く終わらせて映画館に足を運ぶくらいの目玉作だったように思います。それが本作になると、メイン系の劇場での公開も厳しいくらいの変わり様。無論、ここ数年のスピルバーグ作が「E.T.」のようなエンタテイメントの王道から、文芸調の作品へ舵を取っているとはいえ、スピルバーグらしさというのも、年々と減っているように思うのも気になるところ。そんな劣化ぶりが本作にも顕著に出ていると思います。

ちょうど本作が「チャーリーとチョコレート工場」のロアルド・ダール作品が原作ということで、ともに映画の「チャーリーとチョコレート工場」(ティム・バートン監督作)と本作を見比べると、前者は監督の持ち味が十分に出ているのに対し、本作でのスピルバーグの色というのが相当に薄い。主人公が少女ということもその一因ではありますが、何といっても巨人のキャラクターに愛おしさというのが少々ないのが一番残念なところ。「E.T.」ではあの宇宙人をとても愛おしい存在に仕立てていたのに、本作の巨人たちというのは、かじろうてソフィーと関わるBFGはいいとしても、他の巨人たちたちが(悪役とはいえども)相当に醜くなっているのがいかんせん。。「チャーリー〜」でもティム・バートン監督は、その異様なウンガルンガたちでさえ可愛らしさがあったのとはすごく対象的になっているのです。

それに終盤の巨人たちと人間との戦いに発展していくシーンは、人間たちをあれだけ巻き込むのに対し、その要因となっているのが、単なる巨人たちの痴話喧嘩に見えてしまうのもいかがなものかと。本当は、ここにロンドンでの子どもたちが襲われ、失踪するという事件とかが絡むのでしょうが、そこは口頭のみで明確な描写をあえて避けているので、終盤の戦いが迫力の割にはとても小さなエピソード感になってしまったのが否めません。これもお話としては凄いアンバランス感を産んでいると思います。

とはいいつつも、本作をそんなに嫌いになれない自分もいます。BFGを演じるマーク・ライアンスは、「ブリッジ・オブ・スパイ」に引き続きのスピルバーグ作品出演ですが、もう監督のいい色に染まった役者として認識度が上がっています。それにBFGが女王に招かれるシーンが実にいいのです。直前に書いた「あまくてにがい」の感想文の中で、食べ物が美味しそうな映画は得をしていると書きましたが、本作もここがいい効果を生む食事シーンになっています。それに巨人とはいえども、きちんとゲストとして丁重にお迎えするロイヤルファミリーも素晴らしいの一言。どんな人物に対してもホスピタリティの良さを忘れないという、イギリスの精神のようなものが描かれているようで、観ているこちらもいい気分にさせてくれるシーンとなっています。