いずみたつや

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場のいずみたつやのレビュー・感想・評価

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想像するだに恐ろしい状況に右往左往する要人たちの姿に思わず笑ってしまいますが、現実に十分あり得ることだと考えると、本当に暗澹たる気持ちになります…。

この作品はアリアというパン売りの少女の命を取るか、これから被害が見込まれる大勢の命を取るか、という2択の議論が中心に進みます。

1人の命か100人の命か、という問いは簡単に答えが出せるものではありません。しかし、「1」か「100」かといった数字上の問題ではなく、1人1人に名前があることを忘れてはならないし、1/1の犠牲者があなたの大切な人ならどうだろうか、と考えることは非常に重要なことだと思います。

パン売りの少女に「アリア」という名前があることをこの映画の要人たちは知る由もなく、「少女」と呼び続けます。自分の名前も知らない人たちに命を握られることは、恐ろしいとしか言いようがありません。

ただ、この映画は少女の命を握った人間たちを糾弾するわけではなく、十字架を背負わされた人側の苦悩にも寄り添う視点を忘れていないことに好感が持てました。