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アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場のTDのレビュー・感想・評価

2.5
「命」にイデオロギーで線引きした心底不快な映画。

【テロリストはどんどん殺して良い】
同時期に公開された『ドローン・オブ・ウォー』と設定はほぼ同じ。しかし『ドローン~』が無人戦闘機によって無機質的に人を殺すことへの葛藤を描いていたのに対し、今作は「テロリストを殺すために一般人(少女)も巻き添えにして良いのか?」と言う葛藤が物語の推進力。

と言う訳で、テロリストを殺すことには何の躊躇も無い。
しかも「アイツらを生かしておけば多くの人が死ぬ可能性がある。そのためには少女一人ぐらい。」と言う台詞も。

普通ならそう言う伏線があるが最後には、「いや、少女一人の命だって尊く、等しく守るべき」と落ち着くのかと思いきや。。。

【政治的プロパガンダ映画】
『地球が静止する日』など、ハリウッドではビックリする程あからさまな政治的プロパガンダ映画が存在する。
今作も「テロリスト=絶対悪」とし、アメリカの無人戦闘機による攻撃を根底でしっかり肯定している。

ダイバーシティと言う概念がこれだけ普及した世の中において、アメリカ側の視点、テロリスト側の視点を描いてその狭間での葛藤やせめぎ合い、そして取りあえずの着地を見せるのが昨今のこう言う映画の定石ではあると思っていたが。
そう言う根っこで共感できない空気感が蔓延しているので、「少女は助かるの?助からないの?」と言うサスペンスにも全く乗れず、ハラハラもしなかった。

攻撃許可した人間の責任も不問。
データに基づかない憶測で攻撃を肯定した人間の責任も不問。

その上ラストのアラン・リックマンのどや顔による捨て台詞は、本当に心底不快。
「おまえ!そんなヤツの戯言に説き伏せられて涙目なってんなよ!」

久しぶりに映画を観て吐き気がした。
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