サンヨンイチ

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場のサンヨンイチのレビュー・感想・評価

3.7
ザ・問題作といえる、
色々な思いの交錯する作品です。

世界一安全な戦場とは的を射た表現で
部下の身の危険を訴える現場に対し、
そのリスクを強要する主人公?の姿勢が印象的でした。
責任を負いたくない上層部や
正義と称した殺人への躊躇いの無さなど、
直接手を下さない人達の悪さが全面に出ており前半シーンはとくに気分が悪かったです。


そして後半シーン。
冒頭から出ており、絡んでくるのは必須だと思っていた人物が展開を一変させます。

パンが売れるかどうか、固唾を飲んで見守る映画がかつてあったでしょうか。
文言だけでいえば滑稽ではありますが、登場人物たちはパンが売れるよう躍起になり奮闘します。


後半戦では、政治的思想、軍事的思想、そして倫理的思想が交錯し
重大な決断が二転三転します。

それぞれがそれぞれの正義を持ち、
今の1をとるか、少し先の100をとるか、
判断を迫られます。

こればかりはどちら正しいのか結局のところ分かりませんが、
すべてが終わったあとの若いスタッフたちの表情があまりにも残酷な現実を物語っています。
対してベテランチームはまるで日常がごとく、淡々と片付けはじめます。
こうして死へ慣れていくことで
非情な選択を選ぶようになっていく、
軍人には避けられない道を見てしまったように感じます。


ただ最後のアランリックマンの台詞が印象的でした。
これが遺作ということですが、彼の経歴に恥じない作品であったと思います。