月うさぎ

君の名は。の月うさぎのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
3.8
様々な異なるジャンルをこなす映画監督もいれば、作品と作品が繋がっていてテーマが深化していくのが見て取れる監督もいる。
新海監督は間違いなく後者の系譜
「君の名は。」と「秒速5センチメートル」とは表裏の関係
メジャーとマイナーと言ってもいい
「秒速5センチ」で試みた町のリアルな切り取り方や風景の美しさはそのままに
本作ではキャラクターも声優の演技もウケることを目指して作られてちゃんと成功している。
要は「秒速」の真逆の手法をとっている。
これは意識的だと思う。
「聖地巡礼」なんて現象がアニメで起きたのもわかる。本当にある店、駅、橋、電車。四ツ谷に新宿御苑に信濃町etc.
 
最初は高校生男女の入れ替わり?互いに好きになるんでしょ?あるあるだよー。もう40年以上前から漫画であるよ、なんて軽く思って観ていたら、急に不穏な雰囲気に。
入れ替わりだけでなく時間の交錯まで絡んできて、それどころか、彗星の落下という大災害まで起きてしまう。
この急転直下には正直驚いた。
ストーリー的にもかなり複雑でミステリアスな展開
先が読めないので、観たくなる。
結末を色々想像してしまうけれど、思ったようには全くならないところがまた…

エンディングに賛否があったと当時は聞いていた気がするけれど、今観て、この終わりは悪く無いな。
これも「秒速」の逆をやってみたように私には思える。
これはパラレルワールドなの?
まあ、どちらでもいい。未来は一つでは無いということだ。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」と同じように

自然災害は誰のせいでもなく、何の罪もない人を襲う。
自然は美しく雄大で無情だ。 

丁寧な日常描写は、アニメの世界を自分の世界とシンクロさせる効果を生んでいる。
三葉の運命は私やあなたの運命かもしれないと、感じることができる。
三葉と瀧くんが入れ替わっていた時、きっと私達も彼らの中に入っていただろう。
映画ってそういうものじゃない?

蛇足だけど言わせて。
これはSFではないですよ。
この世界はファンタジーとシャーマニズムなんで、
SFとは対極にある物語ですね。
月うさぎ

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