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君の名は。のMSTYのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
4.5
よかった。とてもよかった。

いちばん印象的だったのは「神木くんの演技がかわいい」という点です。きゅんとしました。

物語の感想としては、しっかりコメディになっているところがよかったです。なるべく内容の核心に触れないようにして感想を書こうと思いますが、とりあえず一言だけ。この作品は、いろんなところに注目しながら観られる作品だと思います。

(1) 「対比」と「共通」

たとえば、「対比」という視点からみれば、大都市と地方、男性と女性、大人と子供などといったものがあります。対比は、特徴を際立たせるという効果があります。

「共通」という視点からみれば、地方でも高校生ともなればスマホ使ってるんだなぁとか、電波もちゃんと入るんだなぁとか、瀧も三葉も一緒に動いてくれる仲間がいるんだなぁとか。

単に「対比」させるだけではなく「共通」の部分もあるからこそ、登場人物の性格がうまく引き立っていて、物語に深みが出るのかなと思いました(小学生並の感想)。

(2) 視覚的な側面

わたしがアニメーションを観るときは、「あらゆるアニメーションの描き込みには意味が込められている」という前提のもとに鑑賞することが多いです。特に、この作品のように背景の描き込みが細かい作品の場合は、「どうしてこんなに細かく描き込みをしているのだろう」と考えながら観ます。背景や登場人物の動きが精細に描き込まれているのは、おそらく単に「写実的なリアルさ」を追求しているからというだけではありません。物語をもっと奥深く楽しむための仕掛けが、その中に含まれていると思うのです。たとえば、東京のビル群とか、糸守町の神社の鳥居の朱色が少し禿げているところとか、森の中の道祖神とか。

視覚的なところでは、彗星、太陽柱、水たまりや汗などのきらめきなど、「光」の描写がとても印象的でしたが、「闇」の描写もかなり印象に残っています。闇の描写は、舞台演劇で言えば「暗転」の役割を果たしていて、時間の流れや変化を目に見える形で表現しているように感じました。

(3) 聴覚的な側面

音の面では、歌の流れるタイミングがドンピシャでした。あれはずるい。RADWIMPSの仕事っぷりが素晴らしい。

歌のないBGMも、過度に場面を強調しすぎず、ほどほどのダイナミクスに抑えられているのが効果的に思えました(それはストリングス協力に徳澤青弦がクレジットされているのを見て納得)。無音の使い方もさすがです。

(4) 名前の誰何

鑑賞後に、「君の名は?」と相手の名前を問う意味はなんだろうとぼんやり考えていました。

人は、相手がどんな人かを知るための手がかりとして、よく「名前を尋ねる」ということをします。

ただ、名前がわからなくても、その人がどんな存在かはちゃんとわかるし、すごく大切な人だって実感もできる。そんな状況は確かにありえます。

そこまで相手のことがわかっているにもかかわらず、相手の名前がわからないというのが気になってしまう。それはなぜなのか。わたしはひとまず、こんな答えに行き着きました。

——「名前を尋ねる」というのは、人と人を結ぶ(結び続ける)きっかけになる。名前がわからない状態だと、どんなに相手のことを知っていても、人と人との「結び」に至っていないと思ってしまう。名前は単なる個体の識別記号ではなく、名前の中に人と人とのやり取りの歴史が保存される。

そんなの改めて言うまでもない、当たり前のことじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、「当たり前」だと見なされるからこそ、時には振り返って意識してみることが大事なのかなと思います。

あと、「糸守町」という地名も、由来は何だろうとか考えると面白いかもしれないです。
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