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君の名は。のnagashingのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
3.5
田中将賀と安藤雅司の起用はたんなる芝居の充実という以上に、新海作品で顕著だった背景とキャラクターの情報量の格差を是正するものだったことがよくわかる。人物の作画的な密度を底上げし、個人に対する世界の圧倒的優位をビジュアル面で(ある程度)解消することが、運命に抗う少年少女のナラティヴを成立させるに不可欠だったのだろう。グロテスクなまでの風景美や目まぐるしく加速する時間も、RADWIMPSの音楽によって、茫漠たる人生への畏怖から豊かさと可能性の表象へと肯定的に捉え直されている。セカイ系的な近景と遠景の短絡を、彗星と精子と組紐と臍帯がつながるアニメ表現のダイナミズムに利用するにいたっては円熟味すら感じた。誰そ彼(逢魔)時という怪談モチーフで、物語の主題(タイトル)と山場(マジックアワー)を二重化する言語操作も周到。『100%の女の子に出会うことについて』の運命論や『世界の終り』の心象風景として村上春樹が提示した消費社会における喪失感を、3.11の傷跡に結びつけて、角川印のノスタルジーと伝奇ロマンでパッケージするのは安直ゆえに強力だが、その倫理性は問われていい。